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真珠浪漫物語
第15章 Under The Rose
その日の晩餐は、本格的な西洋料理のフルコースに、土鍋で煮たおでんがロイヤルコペンハーゲンの食器で配されるというまことに珍妙なものであった。
月城はワインを注ぎながら片眉を吊り上げ、大袈裟にため息を吐く。
「…このような下世話なものがやんごとない北白川伯爵家の晩餐のテーブルに載るとは…世も末です」
綾香はむっとして月城にその綺麗な唇を突き出して見せる。
「なによ〜、おでんのどこが下世話なのよ〜、あんただってこういうものを食べて育ったクチでしょ?」
「私は別に良いのです。梨央様が召し上がるものではないと申し上げているのです」
「お〜お〜、そうやって過保護にするから梨央は引っ込み思案になっちゃったんじゃないの⁉︎」
「お言葉を返すようですが、梨央様はお小さい頃から食物アレルギーが酷かったので私は慎重になっているだけなのです」
二人の言い争いを止めようと、梨央はおずおずと
「…月城、私はおでんが気に入ったのです。お姉様のお家で、お隣のお母様がご馳走して下さって…。…特につみれが好きです」
と、宥めてフォークで小さく切ったつみれを口に運び微笑んだ。
その様子は天使のように清らかで美しい。
綾香と月城は思わず梨央に見惚れ、同時に呟いた。
「…可愛い…」
そして、はっと顔を見合わせ、また同時にフン!と顔を背けた。
綾香は食事を続けながら月城にさりげなく切り出す。
「…ねえ、月城。私、ちょっと明日外出してもいいかしら?」
月城は怪訝な顔をする。
「外出…でございますか?…どちらにお出かけですか?」
「…浅草…」
梨央のフォークがびくりと止まる。
「浅草に何のご用なのですか?」
綾香はナイフとフォークをきちんと置いて話し出す。
「私が歌っていた店に行きたいの」
「浪漫ですか?」
「そう。店の様子とか…店のみんなの様子も気になるし、なにしろ急に飛び出してきちゃったから」
月城は改めて穏やかに綾香に意見する。
「…綾香様、一度申し上げなくてはと思っていたのですが、綾香様はもうれっきとした伯爵令嬢なのです。あのお店をどうのこうの言うつもりはありませんが、綾香様は綾香様の進むべき輝かしい道が他にあるのです。過去はお忘れ下さいませ」
「月城…!そんな…!」
月城はワインを注ぎながら片眉を吊り上げ、大袈裟にため息を吐く。
「…このような下世話なものがやんごとない北白川伯爵家の晩餐のテーブルに載るとは…世も末です」
綾香はむっとして月城にその綺麗な唇を突き出して見せる。
「なによ〜、おでんのどこが下世話なのよ〜、あんただってこういうものを食べて育ったクチでしょ?」
「私は別に良いのです。梨央様が召し上がるものではないと申し上げているのです」
「お〜お〜、そうやって過保護にするから梨央は引っ込み思案になっちゃったんじゃないの⁉︎」
「お言葉を返すようですが、梨央様はお小さい頃から食物アレルギーが酷かったので私は慎重になっているだけなのです」
二人の言い争いを止めようと、梨央はおずおずと
「…月城、私はおでんが気に入ったのです。お姉様のお家で、お隣のお母様がご馳走して下さって…。…特につみれが好きです」
と、宥めてフォークで小さく切ったつみれを口に運び微笑んだ。
その様子は天使のように清らかで美しい。
綾香と月城は思わず梨央に見惚れ、同時に呟いた。
「…可愛い…」
そして、はっと顔を見合わせ、また同時にフン!と顔を背けた。
綾香は食事を続けながら月城にさりげなく切り出す。
「…ねえ、月城。私、ちょっと明日外出してもいいかしら?」
月城は怪訝な顔をする。
「外出…でございますか?…どちらにお出かけですか?」
「…浅草…」
梨央のフォークがびくりと止まる。
「浅草に何のご用なのですか?」
綾香はナイフとフォークをきちんと置いて話し出す。
「私が歌っていた店に行きたいの」
「浪漫ですか?」
「そう。店の様子とか…店のみんなの様子も気になるし、なにしろ急に飛び出してきちゃったから」
月城は改めて穏やかに綾香に意見する。
「…綾香様、一度申し上げなくてはと思っていたのですが、綾香様はもうれっきとした伯爵令嬢なのです。あのお店をどうのこうの言うつもりはありませんが、綾香様は綾香様の進むべき輝かしい道が他にあるのです。過去はお忘れ下さいませ」
「月城…!そんな…!」