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真珠浪漫物語
第16章 訪問者

綾香は千に気さくにサンドイッチを勧める。
「千、これ食べてごらん。胡瓜のサンドイッチ。すごく美味しいから!あ、こっちはね、スコーンて言うの。このクリーム付けて食べてみて!クロテッドクリームって言うんだけどさ。こっちもびっくりするくらい美味しいから!」
…と、何くれとなく千の世話を焼く姿は昔の綾香と少しも変わらず千はほっとし、嬉しくなる。
「ありがとう。…本当だ!美味しい!」
勧められた胡瓜のサンドイッチを頬張り、歓声を上げる千を綾香と梨央は嬉しそうに見つめ、二人は仲良く笑い合う。
…綾香はもう俺とは別世界の人かもしれないけれど…でも、綾香が幸せそうだから…これで良かったんだ。
千はそう自分に納得させる。
綾香が、千の紅茶のお代わりをカップに注ぎながら気がかりなように尋ねた。
「千、浪漫はどう?店は相変わらず?」
「うん…。あ、でもオーナーやバンマスが新しく入った歌手の子を特訓したり、趣向を凝らしたりしてなんとか活気を取り戻そうとして頑張ってるよ。新しく入った子は綾香のファンでさ。綾香さんみたいになりたい!て言ってる。…素朴で良い子なんだけど、大福みたいに太ってて、しかも東北訛りがすごくてさ、英語の歌がお経みたいに聞こえちゃって…バンマスが頭抱えながら指導してるけどね」
ユーモラスに語る千の話に、綾香と梨央も思わず笑い出す。
「…そうかあ…、その子が育ってくれるといいな…」
しみじみ呟く綾香を見て、千はあることを思い出した。
そして少し遠慮がちに口を開く。
「…そう言えば…こないだ店に、当麻さんが来たよ。…あの人、ドイツ留学から帰ってきたんだね」
綾香の手からティースプーンが落ちる。
高価な銀のカトラリーは高い音を立てて、テーブルクロスの上に転がった。
梨央は、はっとして綾香を見つめる。
綾香はすぐに平然とした表情を取り戻し、明るく笑う。
「へえ、そう。…元気だった?」
屈託無く千に尋ねる。
「…あ、うん…大人っぽくなっていて、立派な紳士だったよ。…それで…綾香の事を一番に聞かれてさ。…つい正直に答えちゃったけど…まずかったかな?」
千がおずおずと聞く。
綾香は陽気に笑いながら、お茶を飲む。
「全然!別に構わないよ」
ずっと不安そうな眼差しで綾香を見つめる梨央に気づき、安心させるように笑いかける。
「…私の昔の恋人。でももう過去の人…心配しないで」
「千、これ食べてごらん。胡瓜のサンドイッチ。すごく美味しいから!あ、こっちはね、スコーンて言うの。このクリーム付けて食べてみて!クロテッドクリームって言うんだけどさ。こっちもびっくりするくらい美味しいから!」
…と、何くれとなく千の世話を焼く姿は昔の綾香と少しも変わらず千はほっとし、嬉しくなる。
「ありがとう。…本当だ!美味しい!」
勧められた胡瓜のサンドイッチを頬張り、歓声を上げる千を綾香と梨央は嬉しそうに見つめ、二人は仲良く笑い合う。
…綾香はもう俺とは別世界の人かもしれないけれど…でも、綾香が幸せそうだから…これで良かったんだ。
千はそう自分に納得させる。
綾香が、千の紅茶のお代わりをカップに注ぎながら気がかりなように尋ねた。
「千、浪漫はどう?店は相変わらず?」
「うん…。あ、でもオーナーやバンマスが新しく入った歌手の子を特訓したり、趣向を凝らしたりしてなんとか活気を取り戻そうとして頑張ってるよ。新しく入った子は綾香のファンでさ。綾香さんみたいになりたい!て言ってる。…素朴で良い子なんだけど、大福みたいに太ってて、しかも東北訛りがすごくてさ、英語の歌がお経みたいに聞こえちゃって…バンマスが頭抱えながら指導してるけどね」
ユーモラスに語る千の話に、綾香と梨央も思わず笑い出す。
「…そうかあ…、その子が育ってくれるといいな…」
しみじみ呟く綾香を見て、千はあることを思い出した。
そして少し遠慮がちに口を開く。
「…そう言えば…こないだ店に、当麻さんが来たよ。…あの人、ドイツ留学から帰ってきたんだね」
綾香の手からティースプーンが落ちる。
高価な銀のカトラリーは高い音を立てて、テーブルクロスの上に転がった。
梨央は、はっとして綾香を見つめる。
綾香はすぐに平然とした表情を取り戻し、明るく笑う。
「へえ、そう。…元気だった?」
屈託無く千に尋ねる。
「…あ、うん…大人っぽくなっていて、立派な紳士だったよ。…それで…綾香の事を一番に聞かれてさ。…つい正直に答えちゃったけど…まずかったかな?」
千がおずおずと聞く。
綾香は陽気に笑いながら、お茶を飲む。
「全然!別に構わないよ」
ずっと不安そうな眼差しで綾香を見つめる梨央に気づき、安心させるように笑いかける。
「…私の昔の恋人。でももう過去の人…心配しないで」

