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真珠浪漫物語
第16章 訪問者

数日後、北白川家に不意の来客が現れた。
予約なしの来客は、執事の月城がまずは慇懃無礼に応対し、その後は大抵の客は丁重にお帰りいただく…と言うのが定石であった。
…が、今回は少々勝手が違った。
その来客は、まだ若い紳士で、一目で舶来品と分かる高価な帽子やジャケットやシャツを粋に着こなしていた。
何より、すらりと高い身長、均整の取れた身体、端正に整った顔立ちは男の月城ですら見惚れてしまうほど美しかった。
月城はさりげなく男の全身を見渡し、車寄せに止められたままのロールスロイスにも目をやる。
…お抱え付きの運転手か…。
しかし、貴族の子弟の方の中ではお見かけしない顔だ…。
月城はそのような事を推測っているなどと、おくびにも出さずに、柔かに尋ねた。
「…恐れ入りますが、貴方様のお名前とご用件をお伺いできますでしょうか?」
紳士は、その端正な顔をやや緊張させながらも、育ちの良さが十分伺える口調で話し出す。
「突然、お約束もなくお伺いしたご無礼をお許し下さい。…私の名前は、当麻望己と申します。…こちらのご令嬢…綾香さんにお目通りさせていただきたく伺いました」
月城は訝しげに眉を顰めた。
綾香に来客などかつてなかったからだ。
綾香の知人といえば、浅草時代の庶民のはず…。
しかし、この若き紳士は良家の子息に見えるのだが…。
どういった知り合いなのか?
当麻と名乗った男は、月城の疑問を晴らすように、さらりと答えた。
「…私は…かつて綾香さんとお付き合いしていた者です。先日、ドイツより帰国いたしました。綾香さんがこちらの伯爵家のご令嬢でいらしたとお聞きし…いえ、綾香さんにどうしてもお会いしたく、伺いました。どうかお取り次ぎをお願いいたします!」
当麻の頬は紅潮し、瞳には強い光が宿っていた。
綾香の昔の恋人と分かり、さすがの月城も驚きを隠せずに、答えに窮していると、月城の背後…玄関ホールから声が聞こえた。
「…お姉様に、どのようなご用件でしょうか…?」
「梨央様…!」
静かな、しかし…珍しいことだが…どこか強い警戒心の感じられる表情をして梨央は佇んでいた。
当麻は、奥から出て来た美しい白い清楚な花のような令嬢に驚きながら丁寧に答えた。
「…妹様ですか?…私は綾香さんのかつての恋人です。綾香さんに一目だけでもお会いしたく、参りました。どうかお取り次ぎをお願いいたします」
予約なしの来客は、執事の月城がまずは慇懃無礼に応対し、その後は大抵の客は丁重にお帰りいただく…と言うのが定石であった。
…が、今回は少々勝手が違った。
その来客は、まだ若い紳士で、一目で舶来品と分かる高価な帽子やジャケットやシャツを粋に着こなしていた。
何より、すらりと高い身長、均整の取れた身体、端正に整った顔立ちは男の月城ですら見惚れてしまうほど美しかった。
月城はさりげなく男の全身を見渡し、車寄せに止められたままのロールスロイスにも目をやる。
…お抱え付きの運転手か…。
しかし、貴族の子弟の方の中ではお見かけしない顔だ…。
月城はそのような事を推測っているなどと、おくびにも出さずに、柔かに尋ねた。
「…恐れ入りますが、貴方様のお名前とご用件をお伺いできますでしょうか?」
紳士は、その端正な顔をやや緊張させながらも、育ちの良さが十分伺える口調で話し出す。
「突然、お約束もなくお伺いしたご無礼をお許し下さい。…私の名前は、当麻望己と申します。…こちらのご令嬢…綾香さんにお目通りさせていただきたく伺いました」
月城は訝しげに眉を顰めた。
綾香に来客などかつてなかったからだ。
綾香の知人といえば、浅草時代の庶民のはず…。
しかし、この若き紳士は良家の子息に見えるのだが…。
どういった知り合いなのか?
当麻と名乗った男は、月城の疑問を晴らすように、さらりと答えた。
「…私は…かつて綾香さんとお付き合いしていた者です。先日、ドイツより帰国いたしました。綾香さんがこちらの伯爵家のご令嬢でいらしたとお聞きし…いえ、綾香さんにどうしてもお会いしたく、伺いました。どうかお取り次ぎをお願いいたします!」
当麻の頬は紅潮し、瞳には強い光が宿っていた。
綾香の昔の恋人と分かり、さすがの月城も驚きを隠せずに、答えに窮していると、月城の背後…玄関ホールから声が聞こえた。
「…お姉様に、どのようなご用件でしょうか…?」
「梨央様…!」
静かな、しかし…珍しいことだが…どこか強い警戒心の感じられる表情をして梨央は佇んでいた。
当麻は、奥から出て来た美しい白い清楚な花のような令嬢に驚きながら丁寧に答えた。
「…妹様ですか?…私は綾香さんのかつての恋人です。綾香さんに一目だけでもお会いしたく、参りました。どうかお取り次ぎをお願いいたします」

