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真珠浪漫物語
第16章 訪問者
梨央はその雅な京人形にも似た美しい瞳をやや見開き、唇に薄い微笑みを浮かべた。
微笑んでいるが、微笑んではいない…。
月城はそのような顔をする梨央を見た事がなかった。
月城は梨央の言葉を見守る。

「…お姉様は今、大切なお客様をご接待されています」
当麻は食い下がる。
「待たせていただけないでしょうか?ご迷惑はお掛けいたしません」
「本日はご予定が一杯なのです。…申し訳ありませんが、お引取りくださいませ」
梨央の氷のような表情は崩れない。
「お願いです!一目…一目で良いのです!綾香さんに会わせて下さい!」
梨央に向って一歩踏み出そうとする当麻を、慌てて月城が柔らかく肩を押しとどめた。
月城が声をかける前に、梨央のか細いが有無を言わさぬ意志を感じる声が飛んだ。
「お帰りください!お姉様は、貴方にはお会いにならないわ!」
月城ははっとする。
明らかに綾香と当麻を会わせまいとする梨央の嫉妬にも似た強い感情を感じ取ったからだ。
当麻は、じっと梨央を見つめる。
「…私のことを、綾香さんからお聞きになっていらっしゃるのですか?…ではお判りでしょう?私は、綾香さんの恋人だったのです。どうか綾香さんに会わせて下さい!」
梨央は取り付く島もない態度と声で繰り返す。
「…お帰りください。お姉様は貴方のことはもう何の関係もないと仰っておいででしたわ」
「…⁉︎…綾香が⁈」
梨央は美しい眉を上げて、嫌悪を露わにした。
「お姉様を呼び捨てになんてなさらないで!…お帰りください!…月城、お引取りいただいて」
月城は梨央のただならぬ剣幕に呑まれていたが、いつもの冷静沈着な態度を取り戻し、当麻に丁寧に話しかけた。
「…申し訳ありませんが、本日はお引取り下さいませ。後日改めてお約束を…」

…と、その時…奥の広間から綾香の美しい歌声が聞こえて来た。
ホフマンの舟歌…。
嫋々と艶めいた…だが慈愛に満ち、聴くものの心を捉えずにはいられない稀有な歌声…。
梨央ははっと凍りつく。
当麻は、その端正な顔に喜びの表情を浮かべた。
懐かしい…愛しい恋人を思う顔だ。
「…綾香だ…綾香の声だ!綾香!」
次の瞬間、当麻は月城の腕をすり抜け、ホールを走り抜け、声が聞こえる広間に綾香の名前を叫びながら駆け出していた。
「お待ち下さい!」
月城が慌てて跡を追う。
…梨央は立ち竦む。
…あの声は…
今もお姉様を思う声だわ…。

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