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真珠浪漫物語
第16章 訪問者
綾香はふと歌うのを止め、楽譜から目を上げた。
…懐かしい…忘れようもない人の声…が聞こえたような気がした。

まさかね…。綾香は苦笑する。
…千があんなことを言い出すから、私ったら…。

…と、次の瞬間…
「綾香!」
叫ぶような声と共に、扉が開けられた。
そこに綾香は信じられない光景を見た。
…かつて愛した人…
当麻望己が、あの日と変わらず…いや、格段に洗練され、大人の男になった姿で立っていたのだ。

「…綾香…!やっぱり綾香だ!」
当麻がゆっくりと綾香に近づき、いきなり抱きすくめる。
「…望己さん…!」
自分を抱きしめている人が、本当にその人なのか、確かめるように綾香は名前を呼んだ。

廊下で小さな悲鳴が上がった。
綾香ははっと我に返った。
梨央が青ざめた顔をして、信じられないものを見るような悲壮な眼差しをしている。
「…梨央…」
「…お姉様…」
掠れた声でようやくそのひとことを絞り出す。
綾香は、冷静に当麻の腕から離れようとする。
「…離して…望己さん…」
「綾香…逢いたかった…」
当麻は綾香を離さない。
その瞳は昔のままの情熱をたたえている。

月城が当麻の熱をなんとか冷まそうと、落ち着いた声で綾香に尋ねる。
「…綾香様、当麻様にお引取り願いますか…?」
綾香は少し考え呼吸を整え、月城を見て答えた。
「…いいえ。…当麻様を客間にご案内して。お茶の支度もお願い。…二人で少しお話ししたいの…」
梨央が小さく叫んだ。
「…お姉様!」
梨央と綾香の視線が交錯する。
「…梨央…」
綾香が梨央に何かを語ろうとした瞬間、梨央は綾香に背を向け、その場を走り去った。
「梨央様!」
月城が声をかけるが、梨央は振り返りもせず、大階段を駆け上がって自室に駆け込んでしまった。

綾香は梨央の走り去る様子に胸を痛めながらも、冷静に
「月城、梨央をお願い。…すみれ、当麻様を客間にご案内して。私もすぐにまいります」
と、指示をする。
「…かしこまりました。…すみれ、お客様を客間にご案内してくれ。お茶の支度は私が指示を出しておく」
月城が冷静に傍らのすみれに告げる。
「は、はい。…当麻様、どうぞこちらに…」
と、すみれも淀みのない動きで案内する。
当麻は綾香を見つめ、離れがたい表情をしながらもすみれに従い、客間に向った。



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