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真珠浪漫物語
第16章 訪問者
梨央は自室に駆け込んで扉にもたれかかり、静かに泣き出す。
「…お姉様…!…どうして⁈…もうその方を思っていないと仰ったのに…もしかして…まだ愛していらっしゃるの?」
梨央の頭の中に先ほどの、当麻に抱きしめられる綾香の姿が浮かび、胸が張り裂けそうになる。
「…お姉様…!嫌!他の方にお姉様を触れさせるなんて…嫌!」
嗚咽を漏らしていると、静かなノックの音が聞こえる。
「…梨央様…大丈夫ですか?…ここをお開けください…」
梨央は月城の変わらぬ落ち着いた声に、導かれるように扉をゆっくり開ける。
月城は端正な眼鏡の奥に心配そうな表情を浮かべていた。
…昔からそうだ。
月城は、綾香が泣きながら部屋に閉じこもるとすぐに部屋を訪れ、言葉少なだが真摯に声をかける。
梨央は月城を見た瞬間、張り詰めていた糸が音を立てて切れ、子供のように号泣しながら月城の胸に飛び込んだ。
「…お、お嬢様…?」
戸惑う月城の胸で梨央は6歳の子供に還ったように泣き続けた。
月城もまた、かつての小さな泣き虫の梨央を宥めるように優しく髪を撫でた。
「…どうされたのですか?…梨央様…先ほどの梨央様の態度といい…いつもの梨央様ではありませんね…」
「…月城…私…私…お姉様を…取られたくないの…どなたにも…例え、かつての恋人でも…」
「…梨央様…」
月城は、ふっと困ったような優しい笑みを漏らした。
「…梨央様は、そんなに綾香様がお好きですか?」
梨央は流れ落ちる涙を拭おうともせずに、頷く。
「…好き…大好き…お姉様が大好き…愛しているの…!」
…と言ってしまってから、梨央ははっと口を押さえる。
月城は穏やかな表情を変えずに、胸元のポケットから白いハンカチを取り出し、優しく梨央の涙を拭いてやる。
「…存じておりますよ。…梨央様がいかに綾香様を愛していらっしゃるか…」
「…月城…?」
月城は眼鏡を押し上げ、少し戯けて笑う。
「私はお嬢様がお小さい頃からずっと見守っているのですよ?梨央様のことなら何でも手に取るようにわかります。…執事とはそういうものです」
「…月城…」
月城は最後に優しく背中を叩き、励ますように囁いた。
「綾香様をお信じなさいませ。…あの方は、梨央様を誰よりも愛しておられます」
「…月城…!」
梨央の瞳から再び涙が零れ落ちる。
月城は微笑みながら、いつまでも幼子をあやす様に梨央を慰めるのだった。
「…お姉様…!…どうして⁈…もうその方を思っていないと仰ったのに…もしかして…まだ愛していらっしゃるの?」
梨央の頭の中に先ほどの、当麻に抱きしめられる綾香の姿が浮かび、胸が張り裂けそうになる。
「…お姉様…!嫌!他の方にお姉様を触れさせるなんて…嫌!」
嗚咽を漏らしていると、静かなノックの音が聞こえる。
「…梨央様…大丈夫ですか?…ここをお開けください…」
梨央は月城の変わらぬ落ち着いた声に、導かれるように扉をゆっくり開ける。
月城は端正な眼鏡の奥に心配そうな表情を浮かべていた。
…昔からそうだ。
月城は、綾香が泣きながら部屋に閉じこもるとすぐに部屋を訪れ、言葉少なだが真摯に声をかける。
梨央は月城を見た瞬間、張り詰めていた糸が音を立てて切れ、子供のように号泣しながら月城の胸に飛び込んだ。
「…お、お嬢様…?」
戸惑う月城の胸で梨央は6歳の子供に還ったように泣き続けた。
月城もまた、かつての小さな泣き虫の梨央を宥めるように優しく髪を撫でた。
「…どうされたのですか?…梨央様…先ほどの梨央様の態度といい…いつもの梨央様ではありませんね…」
「…月城…私…私…お姉様を…取られたくないの…どなたにも…例え、かつての恋人でも…」
「…梨央様…」
月城は、ふっと困ったような優しい笑みを漏らした。
「…梨央様は、そんなに綾香様がお好きですか?」
梨央は流れ落ちる涙を拭おうともせずに、頷く。
「…好き…大好き…お姉様が大好き…愛しているの…!」
…と言ってしまってから、梨央ははっと口を押さえる。
月城は穏やかな表情を変えずに、胸元のポケットから白いハンカチを取り出し、優しく梨央の涙を拭いてやる。
「…存じておりますよ。…梨央様がいかに綾香様を愛していらっしゃるか…」
「…月城…?」
月城は眼鏡を押し上げ、少し戯けて笑う。
「私はお嬢様がお小さい頃からずっと見守っているのですよ?梨央様のことなら何でも手に取るようにわかります。…執事とはそういうものです」
「…月城…」
月城は最後に優しく背中を叩き、励ますように囁いた。
「綾香様をお信じなさいませ。…あの方は、梨央様を誰よりも愛しておられます」
「…月城…!」
梨央の瞳から再び涙が零れ落ちる。
月城は微笑みながら、いつまでも幼子をあやす様に梨央を慰めるのだった。