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真珠浪漫物語
第17章 昔みたいに…
当麻の母は、部屋に上がるやいなや、その場に正座すると綾香に向って三つ指をついて頭を下げた。
「綾香さん、お願いです。望己さんと…息子と別れて下さい!お願いします!」
「…⁉︎」
言葉を失う綾香に、顔を上げた母親は必死の形相でかき口説く。
「息子は、綾香さんと別れるくらいなら死ぬと言い張っています。食事も摂りません。今は離れに閉じ込めていますが、何度も逃げ出そうとして…」
「…望己さん…」
母親の言葉が胸に突き刺さる。
「このままでは、あの子は駄目になります。せっかく将来を約束された身なのに…。」
「……」
母親はふと力弱い表情をして呟くように言った。
「…勝手な事を言う母親だとお思いでしょうね…。私はね、綾香さん。望己さんを主人の後継の医者にすることだけを考えて生きて来たのです。
…かつて私は主人の正式な妻ではありませんでした。赤坂で芸者をしていた時に見染められ、妾になりました」
「…⁉︎」
「その後、長患いをなさっていた奥様がお亡くなりになり、私は主人の後妻に入りました。それからは…周囲の私を蔑む眼との闘いの毎日でした。何をしても、どんなに頑張っても所詮芸者上がりの後妻に何が出来ると嘲笑われ…でも…望己さんが生まれて…嬉しかった…前の奥様との間にお子様がいなかった主人はそれはそれは喜んでくれて…。望己さんは本当に良い子で、賢く美しく立派に育ってくれて…自慢の息子でした…」
母親の白い頬に涙が流れ出す。
言葉の一つ一つが胸に突き刺さり、痛い…。
母親は縋るように綾香を見つめる。
「私は望己さんを完璧な主人の後継者にしなくてはならないのです!望己さんのお嫁さんは…誰からも後ろ指をさされないような良家のお嬢様でなくてはならないの!私のような出自の女であってはならないのです!
綾香さんには何の恨みもありません。貴方が綺麗で素晴らしい歌手だと言うことも…きっと良い娘さんだと言うことも…よくわかっています!でも、望己のお嫁さんにする訳にはいかないの!お願いです。貴方から別れてやって下さい!」
母親は畳に頭を擦り付ける。
「…お母様…」
意地もプライドもかなぐり捨てた凄まじい母親の執念がそこにはあった。
「…望己さんの事を本当に愛しているのなら…望己さんの事を本当に思って下さるのなら…どうか…どうか別れてやって下さい…!」
綾香にはもはや何の言葉も浮かばなかった。


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