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真珠浪漫物語
第17章 昔みたいに…
当麻は怒りを堪えながらも、父親の肩を全力で掴みかかり、揺さぶる。
母親が悲鳴をあげる。
「…あんたは…!あんたって人は…!どこまで汚いんだ!僕と綾香を引き離し、その上、僕を外国に追いやるつもりなのか⁈」
すっかり背も力も抜かされた息子に一瞬怯みながらも、父親は当麻を突き飛ばす。
そして、スーツの襟を神経質に直しながら唇を歪める。
「だからお前はまだまだ、世間知らずなのだ!
…あの女は、私が出した莫大な手切れ金をあっさり受け取ったのだぞ」
当麻は目を見開く。
「…嘘だ…何言ってるんだ、あんた…」
父親は新しい葉巻に火をつけ、にやりと笑う。
「嘘だと思うなら、お母様に聞いてみろ。…お母様があの女に手切れ金を渡しに行ったのだからな」
傍らにすっかり青ざめて棒立ちになっている母親を見る。
「…本当なの、お母様…。…嘘だよね⁈綾香がそんなことする訳がない‼︎」
母親は首を振りながら当麻に縋り付く。
「本当なのよ、望己さん!…綾香さんはお金を受け取られて、貴方とは綺麗さっぱりとお別れしますと仰ったの…!
だからドイツに留学して、綾香さんのことは忘れて…!
お願いよ、望己さん!…貴方なら、家柄も何もかも申し分のないお嬢様との縁談が降るようにあるのよ…!お願いだから、目を覚まして…!」
泣き崩れる母親を乳母が抱き起こす。
当麻は呆然と立ち尽くす。
自失状態の息子に、父親は殊更陽気に肩を抱く。
「…お前はまだ若いのだ。若いからちょっと美人な場末の歌手になど引っかかったのだ。…世界は広い!ドイツに行ってもっとたくさんの女と遊んでこい。…愛人なら何人作っても構わんからな。…いっそその女も愛人にすれば良かったのだ。…結婚だなんだ面倒くさいことを言うから揉めたんじゃないか」
馬鹿にしたように笑う父親に、当麻は鋭い目つきで睨みつけ、拳で殴りつけた。
父親が庭の植え込みに倒れこむ。
書生達が慌てて飛び出し、尚も暴れる当麻を抑えつける。
「あんた最低だ!お母様の前でよくもそんなことが言えるな!綾香を侮辱することも許さない!綾香はそんな女じゃない!」
書生に起こして貰いながら父親は、さすがに余裕をなくしながらも、怒り狂う当麻をじっと見据え
「部屋に連れて行け。明日の出発まで見張りを怠るな!」
と命じ、庭を後にした。
…後には泣き続ける母親だけが残された。
母親が悲鳴をあげる。
「…あんたは…!あんたって人は…!どこまで汚いんだ!僕と綾香を引き離し、その上、僕を外国に追いやるつもりなのか⁈」
すっかり背も力も抜かされた息子に一瞬怯みながらも、父親は当麻を突き飛ばす。
そして、スーツの襟を神経質に直しながら唇を歪める。
「だからお前はまだまだ、世間知らずなのだ!
…あの女は、私が出した莫大な手切れ金をあっさり受け取ったのだぞ」
当麻は目を見開く。
「…嘘だ…何言ってるんだ、あんた…」
父親は新しい葉巻に火をつけ、にやりと笑う。
「嘘だと思うなら、お母様に聞いてみろ。…お母様があの女に手切れ金を渡しに行ったのだからな」
傍らにすっかり青ざめて棒立ちになっている母親を見る。
「…本当なの、お母様…。…嘘だよね⁈綾香がそんなことする訳がない‼︎」
母親は首を振りながら当麻に縋り付く。
「本当なのよ、望己さん!…綾香さんはお金を受け取られて、貴方とは綺麗さっぱりとお別れしますと仰ったの…!
だからドイツに留学して、綾香さんのことは忘れて…!
お願いよ、望己さん!…貴方なら、家柄も何もかも申し分のないお嬢様との縁談が降るようにあるのよ…!お願いだから、目を覚まして…!」
泣き崩れる母親を乳母が抱き起こす。
当麻は呆然と立ち尽くす。
自失状態の息子に、父親は殊更陽気に肩を抱く。
「…お前はまだ若いのだ。若いからちょっと美人な場末の歌手になど引っかかったのだ。…世界は広い!ドイツに行ってもっとたくさんの女と遊んでこい。…愛人なら何人作っても構わんからな。…いっそその女も愛人にすれば良かったのだ。…結婚だなんだ面倒くさいことを言うから揉めたんじゃないか」
馬鹿にしたように笑う父親に、当麻は鋭い目つきで睨みつけ、拳で殴りつけた。
父親が庭の植え込みに倒れこむ。
書生達が慌てて飛び出し、尚も暴れる当麻を抑えつける。
「あんた最低だ!お母様の前でよくもそんなことが言えるな!綾香を侮辱することも許さない!綾香はそんな女じゃない!」
書生に起こして貰いながら父親は、さすがに余裕をなくしながらも、怒り狂う当麻をじっと見据え
「部屋に連れて行け。明日の出発まで見張りを怠るな!」
と命じ、庭を後にした。
…後には泣き続ける母親だけが残された。