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真珠浪漫物語
第17章 昔みたいに…
「…雪が降ってきたよ、綾香…」
千が窓の外を見ながら呟く。
綾香はぼんやりと座りこんでいたが、ゆっくりと首を巡らす。
…雪…。

…もうすぐ雪が降るね…。

愛しあったあと、二人で一つの粗末な布団に包まり、抱き合いながら、他愛もない話をした。

雪が積もったら、雪だるまを作ろう。
そうだ…雪合戦したことある?綾香。

…ないわ。

雪合戦、楽しいよ。千君も呼んでやろうよ。
高校で寮別対抗でやるんだけど、僕のチームは負けたことがないのさ。
綾香にもコツを教えてあげる。

…痛そうで、やだ!

ふいに当麻は笑いながら優しく綾香を抱きしめる。
僕が綾香に痛いことする訳ないじゃない?
そう言って、綾香の顔中にキスの雨を降らせる。
愛している…。綾香…。
雪が降って、春になって、桜が咲いて、夏になって、ひまわりが咲いて、秋になって、秋桜が咲いて、また冬になって、雪が降って…
そうやって季節は巡ってもずっとずっと一緒にいよう。
ね、綾香…。

…望己さん…!

「…綾香…」
千が困ったような痛ましいような顔をして見つめている。
綾香は自分が涙を流していることに気づいた。
慌てて涙を払いのける。
「…ごめんね、千。…私は大丈夫だから、もう家に帰りな」
「ここにいる!綾香が心配だもん!母さんも綾香に付いてあげなって…」
千の少年ながら凛々しい顔が怒ったように引き締まった。
「…千…」
…その時、玄関で遠慮勝ちな小さな声が聞こえた。

「…ごめんくださいまし。…綾香さんはいらっしゃいますか?…私、望己坊っちゃまの乳母でございます…」

綾香ははっとし、立ち上がる。
「…綾香…」
千が励ますように綾香を見つめる。
綾香は急いで玄関に向かい、扉を開けた。


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