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真珠浪漫物語
第17章 昔みたいに…
当麻の乳母から手渡された手紙を綾香は恐る恐る開く。

「…愛する綾香へ
僕は明日、ドイツに旅立たなくてはならない。
父が無理やりベルリン大学への留学を決めた。
綾香、君が僕の親から手切れ金を受け取ったなどという戯言は僕は信じない。

ただ、君に逢いたい。
日本を離れる前に、一目でいいから君に逢いたい。
…もし、僕を愛しているならば、明日12時に横浜山下町の埠頭に来てくれ。
必ず、君は来てくれると信じている。

望己」

…望己さん…!

横から手紙を読んでしまった千は憤慨して叫ぶ。
「酷いよ!綾香が手切れ金なんて受け取る訳ないじゃないか!誰がそんな酷い嘘を…!」
「黙って、千」
有無を言わさない綾香の静かな声が千を制する。
千は押し黙る。

乳母はそっと尋ねる。
「…坊っちゃまへのお返事をお預かりしましょうか…?」
綾香は静かに首を振る。
そして、美しく澄んだ、しかしどこまでも哀しい色の目を乳母に向け、毅然と答えた。
「…お返事はいたしません。…望己さんには、さよならとだけお伝え下さい」
「綾香!それでいいのかよ!」
千は泣きそうになる。
「…それだけでよろしいのですか?」
乳母は真っ赤な目をして聞いた。
綾香は笑った。
「…では…幸せでした。ありがとうと…お伝え下さい」
…幸せだった。
今まで生きて来た人生で…こんなに幸せな日々はなかった…。
この記憶があれば、私はこれからも生きて行けるから…。

千が号泣する。
乳母も袂で目頭を押さえる。

綾香は、窓の外に目をやった。
…しんしんと降り注ぐ雪…。
望己さんと…雪合戦、したかったな…。

…来年も、ずっとずっと一緒にいようね、綾香…。

…望己さん…
瞼の裏に当麻の美しい笑顔が浮かぶ。
…綾香はそっと、目を閉じた。


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