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真珠浪漫物語
第17章 昔みたいに…
…綾香は、ふと我に帰る。

随分長い時間が経った気がした。
だが、先ほど注いだばかりのお茶はまだ湯気を立てていた。

…ここはあの凍えるように寒かった雪降る埠頭ではない。
ルーベンスの名画が飾られ、重厚なアンティーク家具や調度品に囲まれた指折りの華族の名家、北白川家の客間だ…。

…私もあの時の、古びたセーターと擦り切れた外套に身を包んだ二十歳の私ではない。
高価な宝石を身につけ、絹の芸術品のようなドレスに身を包んだ北白川伯爵令嬢の私…。

…三年は、そんな月日なんだ…。

当麻は綾香の心を読むように綾香を見つめながら口を開く。
「…だけど、僕の気持ちは変わっていないよ。…いや、ベルリンでもずっと君のことを考えていた。…忘れようとしたけれど、忘れられなかった…」
綾香が思わず当麻の顔を見上げる。
三年の月日が一気に巻き戻される。
大好きだった当麻の美しい顔…大きな瞳、整った男らしい眉、高貴な鼻筋、唇はやや肉惑的で…キスする時、いつもドキドキした…。
低いバリトンの声も大好きだった…。
…大好き…
だった…
だった…?

綾香の宝石のように美しい瞳に引き寄せられるように綾香の手を握り、顎を捉える。
睫毛が触れ合いそうな距離まで近づいた瞬間…

「お姉様…!」
…梨央の哀しげな顔が頭に浮かんだ。
胸がずきりと痛む。
綾香はとっさに、当麻の腕から逃れる。
…梨央!

「…綾香…」
「…望己さん、…私たち…もう昔みたいにはいかないのよ…」
綾香は俯く。
「いくさ。…僕はベルリン大学を卒業した。…成績優秀者にも選ばれたよ。医師免許も取得した。もう自立した一人前の大人だ。だから改めて綾香にプロポーズしようと帰国したんだ…」
「…望己さん…」
綾香は寂しげに微笑む。
「三年前のことを忘れたの?私たち、望己さんのご両親に大反対されて別れさせられたのよ…またあの苦しい日々を繰り返すの…?」
それを聞いた当麻は、やや言いづらそうに口を開く。
「…両親は君が、北白川伯爵令嬢だったと聞いた途端、結婚を賛成してくれているよ…寧ろ、家柄が釣り合わないんじゃないかと心配している。…何しろうちは貴族じゃないからね…」
…途端に綾香の中で何かが砕け散り、不意に…本当に唐突に笑い出す。
可笑しくて堪らないように笑い続ける綾香に当麻は、怪訝な顔をして、声をかける。
「…綾香…?」








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