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真珠浪漫物語
第19章 Shall we dance ?
振り返ると、縣礼也が柔かな笑顔で佇んでいた。
最新流行の秋の装いが小憎らしいくらいに良く似合っている。
梨央は縣を見て真っ赤になり、梨央とのキスを邪魔された綾香は皮肉っぽく挨拶をする。
「あら縣男爵様、ご機嫌よう。よくここがお分かりになりましたわね」
縣は優雅な仕草で帽子を取りながら一礼する。
「…薔薇の姫君達は温室にいると予想しましてね…」
梨央はかつての綾香との夜の交歓を思い出し、いたたまれないように俯く。
そんな梨央を穏やかに愛しげに見つめながら、窓の外を指差し
「…門の近くで、ジュリアンの車とすれ違いました。梨央さんのダンスのレッスンですか?」
「…は、はい…」
綾香は意外そうな顔をした。
「…あの先生をご存知なの?」
「ええ。私と乗馬クラブが同じなんです。ジュリアンは馬術の名手ですよ。素晴らしいサラブレッドを二頭も所有している」
「…ブルジョアめ…」
とにかく、ジュリアンには印象が良くない綾香である。
それを横目で見ながら、縣は梨央に話しかける。
「…ジュリアンが先週、馬場で話していました。如何に梨央さんが美しく素晴らしいかを…ジュリアンの梨央さんへの熱の入れようは社交界でも今や有名ですよ」
綾香が叫ぶ。
「え⁈やっぱりあいつ、梨央目当てなの⁈」
「でしょうね。私が梨央さんのかつての婚約者と知りつつも、熱に侵されたように梨央さんの賛美を続けていましたから…無邪気なものですがね」
綾香は憤然と立ち上がる。
「私、月城にあのフランス野郎を今すぐクビにするように言ってくる!」
梨央は慌てて、綾香の手を引き止める。
「お姉様!大丈夫ですわ。ロッシュフォール先生はフランスの方だから社交辞令がお上手なだけです…私が余りに緊張しているのでお得意のユーモアでリラックスさせようとなさっているのでしょう」
「でも!あのテの色男は油断ならないよ!ダンスのレッスンは二人きりだし!いきなり襲われでもしたら!」
綾香の怒りは収まらない。
梨央は濡れた眼差しで綾香を見つめ、手を握りしめる。
「そうなったら大声をあげます。…お姉様、私はお姉様だけを愛しているのですよ。どんなに口説かれようとなんとも思いませんわ」
「梨央!可愛い!」
二人はひしと抱きあった。
「…馬鹿馬鹿しい…私は失礼しますよ」
白けて踵を返しかけた縣に、綾香は上機嫌で声をかける。
「お茶をご一緒しません?縣男爵様」
最新流行の秋の装いが小憎らしいくらいに良く似合っている。
梨央は縣を見て真っ赤になり、梨央とのキスを邪魔された綾香は皮肉っぽく挨拶をする。
「あら縣男爵様、ご機嫌よう。よくここがお分かりになりましたわね」
縣は優雅な仕草で帽子を取りながら一礼する。
「…薔薇の姫君達は温室にいると予想しましてね…」
梨央はかつての綾香との夜の交歓を思い出し、いたたまれないように俯く。
そんな梨央を穏やかに愛しげに見つめながら、窓の外を指差し
「…門の近くで、ジュリアンの車とすれ違いました。梨央さんのダンスのレッスンですか?」
「…は、はい…」
綾香は意外そうな顔をした。
「…あの先生をご存知なの?」
「ええ。私と乗馬クラブが同じなんです。ジュリアンは馬術の名手ですよ。素晴らしいサラブレッドを二頭も所有している」
「…ブルジョアめ…」
とにかく、ジュリアンには印象が良くない綾香である。
それを横目で見ながら、縣は梨央に話しかける。
「…ジュリアンが先週、馬場で話していました。如何に梨央さんが美しく素晴らしいかを…ジュリアンの梨央さんへの熱の入れようは社交界でも今や有名ですよ」
綾香が叫ぶ。
「え⁈やっぱりあいつ、梨央目当てなの⁈」
「でしょうね。私が梨央さんのかつての婚約者と知りつつも、熱に侵されたように梨央さんの賛美を続けていましたから…無邪気なものですがね」
綾香は憤然と立ち上がる。
「私、月城にあのフランス野郎を今すぐクビにするように言ってくる!」
梨央は慌てて、綾香の手を引き止める。
「お姉様!大丈夫ですわ。ロッシュフォール先生はフランスの方だから社交辞令がお上手なだけです…私が余りに緊張しているのでお得意のユーモアでリラックスさせようとなさっているのでしょう」
「でも!あのテの色男は油断ならないよ!ダンスのレッスンは二人きりだし!いきなり襲われでもしたら!」
綾香の怒りは収まらない。
梨央は濡れた眼差しで綾香を見つめ、手を握りしめる。
「そうなったら大声をあげます。…お姉様、私はお姉様だけを愛しているのですよ。どんなに口説かれようとなんとも思いませんわ」
「梨央!可愛い!」
二人はひしと抱きあった。
「…馬鹿馬鹿しい…私は失礼しますよ」
白けて踵を返しかけた縣に、綾香は上機嫌で声をかける。
「お茶をご一緒しません?縣男爵様」