この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
真珠浪漫物語
第19章 Shall we dance ?
…翌週、ジュリアンは満面の笑みをたたえながら、巨大な白薔薇の花束を腕に抱え、北白川家を訪れた。
月城に取り次がれ、ダンスのレッスンルームとして使われている遊戯室に向っていた。
ジュリアンはこの日のために、パリで一番の仕立て屋と名高い店で作らせたアイボリーのシャツを着、華やかなリボンタイを締め、チョコレート色のジャケットを着込んできたのだ。
明るい鳶色の長めの巻き毛と良く似合う…
と、我ながら惚れ惚れするような美貌だ。
父譲りの目鼻立ちと長身のスタイルはさながらお伽話の王子のようだし、この屋敷のメイドが業務を忘れ、廊下を颯爽と通り過ぎるジュリアンにぼうっと見惚れるのも無理はない。ジュリアンは無邪気に微笑む。
…なのになぜ梨央さんは私に靡かないのだろうか。
今まで、私が見つめて微笑みかけ、ダンスを踊った相手で堕ちなかった娘はいなかった。
それはパリジェンヌも大和撫子も同じだ。
皆、ジュリアンのような華やかな王子様のような美男子が大好きなのだ。
…なのになぜ⁈

ジュリアンは夜会で初めて梨央を見た日のことを今でも忘れない。
舞踏場のホールから人を避けるように、北側のバルコニーで身を潜めるようにひっそりと佇んでいた…。
清楚な白いシフォンのドレスに身を包み、美しい黒髪に白い薔薇だけを飾っていた姿が余りに可憐で美しく、ジュリアンは思わず見惚れ、言葉を失った。
梨央は目が合うと、恥ずかしそうに目を伏せ、そっと背を向けた。
もっとこの儚げな美少女の姿を見たい!と思ったジュリアンは梨央に一歩近づいた。
怯えたように後退りする梨央。
…と、その時…
バルコニーの入り口から華やかな声が聞こえた。
「…梨央?梨央…、どこにいるの?」
その瞬間、梨央はぱっと目を輝かせ、声の主の方に駆け寄った。
そこには赤いタフタのドレスを着た、妖艶な美女…後で知ったのだが姉の綾香だった…がいた。
「お姉様!」
「梨央…どうしたの?こんな所で…」
「お姉様が他の方とお話ししていらっしゃるから…」
拗ねるように上目遣いで綾香を見る。
綾香は優しく梨央の髪を撫で、誘う。
「…いらっしゃい。梨央が急にいなくなって心配したのよ?」
「ごめんなさい、お姉様…」
美しい絵画から抜け出したような二人はそのまま、寄り添いながらバルコニーを後にした。
ジュリアンは梨央の儚げなしかし薫り高い残り香に暫し酔っていた…。


/226ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ