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真珠浪漫物語
第20章 運命の選択
翌朝、ダイニングルームで綾香と梨央が朝食を摂っていると、月城が伝言を伝えに来た。
「叶男爵夫人よりお急ぎの使者が参りました。急ではありますが、来月の音楽サロンの打ち合わせをしたいので、本日の午後にいらしていただけないかとのことでございます」
綾香は珈琲カップを置き、少し考え、梨央を見た。
「私は構わないけれど、梨央の予定は?」
梨央は、伏し目がちに小さな声で答える。
「…申し訳ありませんが、私、今日は少し頭痛がしますの。…お姉様だけでいらしていただけますか…」
頭痛と聞いて綾香は心配そうな顔をする。
「頭痛?大丈夫?丹羽先生に来ていただく?」
ふいに梨央はナプキンを置きながら立ち上がる。
「…いいえ。お部屋で休んでいたら大丈夫ですわ。…すみません、お姉様。叶夫人によろしくお伝えください…」
「…分かったわ…ゆっくり休んでね」
気がかりで堪らないような顔をした綾香と目も合わさずに、梨央はダイニングルームを後にした。
正午になった。
梨央は昼食も断り、部屋に閉じ籠っている。
案じた綾香が、部屋の扉をノックする。
「梨央?そんなに具合が悪いの?…ねえ、顔を見せて?」
部屋の寝台の端に座り、梨央ははっとする。
「…い、いいえ。大丈夫です。…でも、今休んでいるので…ごめんなさい…」
綾香の沈んだトーンの声が聞こえる。
「…そう。…少し梨央に話があるのだけど…」
梨央ははっとする。
「ごめんなさい…本当に頭痛がするの。…お話はまた今度伺います…」
暫くして綾香の小さな溜息が聞こえた。
「…分かったわ。じゃあ、私は後少しで出掛けるから。…帰ったら話しましょう…大事な話だから…」
梨央はぎゅっと手を握りしめる。
「…わかりました…いってらっしゃい、お姉様…」
「ええ…。梨央もお大事にね…」
綾香の足音が遠ざかる。
梨央は寝台に顔を伏せる。
「…ごめんなさい、お姉様…。今、お姉様とお話して…もし、イタリアに行かれることを決められていたら…私はどうしたら良いか分からない…。お姉様とお話するのが怖いの…」
階下に降りた綾香は待ち受けていた月城に告げる。
「…部屋に閉じ籠ったままよ…顔も見せてくれなかった。どうしたのかしら…」
溜息を吐く。
「…大方の見当は付いております。ご心配には及びません。綾香様はお気をつけてお出かけ下さいませ」
と、月城は安心させるように微笑んだのだった。
「叶男爵夫人よりお急ぎの使者が参りました。急ではありますが、来月の音楽サロンの打ち合わせをしたいので、本日の午後にいらしていただけないかとのことでございます」
綾香は珈琲カップを置き、少し考え、梨央を見た。
「私は構わないけれど、梨央の予定は?」
梨央は、伏し目がちに小さな声で答える。
「…申し訳ありませんが、私、今日は少し頭痛がしますの。…お姉様だけでいらしていただけますか…」
頭痛と聞いて綾香は心配そうな顔をする。
「頭痛?大丈夫?丹羽先生に来ていただく?」
ふいに梨央はナプキンを置きながら立ち上がる。
「…いいえ。お部屋で休んでいたら大丈夫ですわ。…すみません、お姉様。叶夫人によろしくお伝えください…」
「…分かったわ…ゆっくり休んでね」
気がかりで堪らないような顔をした綾香と目も合わさずに、梨央はダイニングルームを後にした。
正午になった。
梨央は昼食も断り、部屋に閉じ籠っている。
案じた綾香が、部屋の扉をノックする。
「梨央?そんなに具合が悪いの?…ねえ、顔を見せて?」
部屋の寝台の端に座り、梨央ははっとする。
「…い、いいえ。大丈夫です。…でも、今休んでいるので…ごめんなさい…」
綾香の沈んだトーンの声が聞こえる。
「…そう。…少し梨央に話があるのだけど…」
梨央ははっとする。
「ごめんなさい…本当に頭痛がするの。…お話はまた今度伺います…」
暫くして綾香の小さな溜息が聞こえた。
「…分かったわ。じゃあ、私は後少しで出掛けるから。…帰ったら話しましょう…大事な話だから…」
梨央はぎゅっと手を握りしめる。
「…わかりました…いってらっしゃい、お姉様…」
「ええ…。梨央もお大事にね…」
綾香の足音が遠ざかる。
梨央は寝台に顔を伏せる。
「…ごめんなさい、お姉様…。今、お姉様とお話して…もし、イタリアに行かれることを決められていたら…私はどうしたら良いか分からない…。お姉様とお話するのが怖いの…」
階下に降りた綾香は待ち受けていた月城に告げる。
「…部屋に閉じ籠ったままよ…顔も見せてくれなかった。どうしたのかしら…」
溜息を吐く。
「…大方の見当は付いております。ご心配には及びません。綾香様はお気をつけてお出かけ下さいませ」
と、月城は安心させるように微笑んだのだった。