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真珠浪漫物語
第20章 運命の選択
「…梨央様、綾香様のイタリア行きのお話をご心配されていらっしゃるのですか?」
梨央の気持ちを慮るように静かに尋ねる。
「…月城は、私のことは何でもわかるのね…」
梨央は月城を見上げる。
月城の端正な顔に優しい微笑が浮かぶ。
その微笑は、梨央が幼い頃に父伯爵の不在を寂しがったり、我儘を言って泣いたりした時、梨央を宥める為に浮かべるものだ。
「分かりますよ。…なにしろ私は梨央様がお小さい頃からずっとお側にいさせていただいているのですから、お顔を見ただけで、何を考えていらっしゃるか一目で分かります…」
月城の慈しみ深い言葉を聞いた途端、梨央の中で、不安と悲しみが一気に押し寄せ、気付いた時には月城の胸に飛びこみ、声を上げて泣いていた。
月城は、静かに梨央を抱きしめた。
「…お姉様が…お姉様が…イタリアに行かれてしまうかも知れない…梨央には…お姉様が全てなのに…お姉様がいらっしゃらなくなったら…どうやって生きていけばいいのか分からない…!でも…お姉様の為を思えば…そうされたほうがいいって、分かっているの…。お姉様の才能を開花させるべきだ…世界に羽ばたいていただきたい…て…でも…寂しい…!寂しくて堪らない!」
子供のようにしゃくりあげて泣く梨央に月城は穏やかに声をかける。
「梨央様は綾香様を本当に愛しておられるのですね…」
「…愛しているわ!梨央にとってお姉様は命なの…お姉様がいらっしゃらなければ、梨央は息ができない!生きていく甲斐もない!」
尚も激しく泣き続ける梨央を月城は子供をあやすように抱きしめ、優しく背中を撫でる。
「…梨央様、綾香様も梨央様と同じお気持ちだと思いますよ。あのお方は梨央様を深く愛しておられます」
「…月城…」
白く艶やかな頬に透明な涙を零しながら月城を見つめる。
「綾香様をお信じなさいませ。綾香様が梨央様のことを考えておられないはずがありません」
そう言いながら月城は梨央の涙を胸元のポケットから取り出したハンカチで優しく拭いてやる。
「…月城…ありがとう…」
梨央がぎこちなく頷いた時、サンルームの入り口の扉が開いた。
帰宅した綾香が外出着のまま立っている。
梨央が月城と抱き合っているのを見ると、美しい眉を顰め、硬い表情で近づく。
「お姉様!」
思わず後ずさりする梨央の手首を掴むと綾香は
「…来て、梨央」
と怒ったようにサンルームから連れ出した。
梨央の気持ちを慮るように静かに尋ねる。
「…月城は、私のことは何でもわかるのね…」
梨央は月城を見上げる。
月城の端正な顔に優しい微笑が浮かぶ。
その微笑は、梨央が幼い頃に父伯爵の不在を寂しがったり、我儘を言って泣いたりした時、梨央を宥める為に浮かべるものだ。
「分かりますよ。…なにしろ私は梨央様がお小さい頃からずっとお側にいさせていただいているのですから、お顔を見ただけで、何を考えていらっしゃるか一目で分かります…」
月城の慈しみ深い言葉を聞いた途端、梨央の中で、不安と悲しみが一気に押し寄せ、気付いた時には月城の胸に飛びこみ、声を上げて泣いていた。
月城は、静かに梨央を抱きしめた。
「…お姉様が…お姉様が…イタリアに行かれてしまうかも知れない…梨央には…お姉様が全てなのに…お姉様がいらっしゃらなくなったら…どうやって生きていけばいいのか分からない…!でも…お姉様の為を思えば…そうされたほうがいいって、分かっているの…。お姉様の才能を開花させるべきだ…世界に羽ばたいていただきたい…て…でも…寂しい…!寂しくて堪らない!」
子供のようにしゃくりあげて泣く梨央に月城は穏やかに声をかける。
「梨央様は綾香様を本当に愛しておられるのですね…」
「…愛しているわ!梨央にとってお姉様は命なの…お姉様がいらっしゃらなければ、梨央は息ができない!生きていく甲斐もない!」
尚も激しく泣き続ける梨央を月城は子供をあやすように抱きしめ、優しく背中を撫でる。
「…梨央様、綾香様も梨央様と同じお気持ちだと思いますよ。あのお方は梨央様を深く愛しておられます」
「…月城…」
白く艶やかな頬に透明な涙を零しながら月城を見つめる。
「綾香様をお信じなさいませ。綾香様が梨央様のことを考えておられないはずがありません」
そう言いながら月城は梨央の涙を胸元のポケットから取り出したハンカチで優しく拭いてやる。
「…月城…ありがとう…」
梨央がぎこちなく頷いた時、サンルームの入り口の扉が開いた。
帰宅した綾香が外出着のまま立っている。
梨央が月城と抱き合っているのを見ると、美しい眉を顰め、硬い表情で近づく。
「お姉様!」
思わず後ずさりする梨央の手首を掴むと綾香は
「…来て、梨央」
と怒ったようにサンルームから連れ出した。