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真珠浪漫物語
第20章 運命の選択
「…私は、こんなにもお姉様に甘えていて良いのでしょうか…」
独り言のように呟く。
「お姉様はイタリアでたくさんのことを精力的に学ばれるでしょう。たとえ異国の地であろうとも、お姉様はどんな困難なことをも耐えうる強い意志をお持ちですから。…でも私は…」
哀しげな眼差しを隣室のガラス越しに見える鳥籠に当てる。
金糸雀が美しく囀っている。
「…私は…あの金糸雀と同じです。外に出たら生きてはいけない…美しい鳥籠が世界のすべてなのです…。そんな私がお側にいたら、お姉様のお勉強の脚枷になってしまうのではないでしょうか…」
梨央の話を静かに聞いていた縣は、穏やかに口を開いた。
「…そんなことをお考えになられるほど、梨央さんは成長されたのですね。…綾香さんに出会われる前の梨央さんは、誰かが常に護らなくては生きてはいけないような儚さと未熟さがありました。…でも今は違う」
縣はじっと梨央を見つめる。
「貴方は強くおなりになった。愛に溺れるだけではなく、相手のことを深く考える賢さをお持ちになった」
「縣様…」
「…綾香さんの愛がそうさせたのでしょうね」
縣は慈しみ深く梨央に微笑む。
梨央は恥ずかしそうに俯く。
「…そんな…私なんてまだまだ未熟で頼りない人間です。縣様の買いかぶりですわ」
「貴方はご自分が思っているよりもずっとお強い人間ですよ。強さと優しさは同じなのです。貴方は愛する方を思いやる強さがある」
梨央は縣を見上げる。
「…縣様…」
「大丈夫、どのような選択をされようと、梨央さんと綾香さんの愛の絆は決して切れることはありません。…お二人は運命によって結びつけられているのですから…」
縣は梨央を励ますように明るく笑う。
「…梨央さんをずっと見守ってきた薔薇の番人が保証するのですから間違いありません」
梨央の美しい瞳から透明な涙が溢れ、白く滑らかな頬を伝う。
「…縣様…ありがとうございます…私、縣様に出会えて幸せでした…」
縣は優しく梨央の肩を撫で、ポケットからハンカチを取り出し、梨央に渡す。
「ありがとうございます…私もですよ…」
梨央は縣のハンカチに顔を埋め、静かに涙を流し続けた。
そんな梨央の肩を、縣はまるで父親のようにそっと優しく抱くのだった。
独り言のように呟く。
「お姉様はイタリアでたくさんのことを精力的に学ばれるでしょう。たとえ異国の地であろうとも、お姉様はどんな困難なことをも耐えうる強い意志をお持ちですから。…でも私は…」
哀しげな眼差しを隣室のガラス越しに見える鳥籠に当てる。
金糸雀が美しく囀っている。
「…私は…あの金糸雀と同じです。外に出たら生きてはいけない…美しい鳥籠が世界のすべてなのです…。そんな私がお側にいたら、お姉様のお勉強の脚枷になってしまうのではないでしょうか…」
梨央の話を静かに聞いていた縣は、穏やかに口を開いた。
「…そんなことをお考えになられるほど、梨央さんは成長されたのですね。…綾香さんに出会われる前の梨央さんは、誰かが常に護らなくては生きてはいけないような儚さと未熟さがありました。…でも今は違う」
縣はじっと梨央を見つめる。
「貴方は強くおなりになった。愛に溺れるだけではなく、相手のことを深く考える賢さをお持ちになった」
「縣様…」
「…綾香さんの愛がそうさせたのでしょうね」
縣は慈しみ深く梨央に微笑む。
梨央は恥ずかしそうに俯く。
「…そんな…私なんてまだまだ未熟で頼りない人間です。縣様の買いかぶりですわ」
「貴方はご自分が思っているよりもずっとお強い人間ですよ。強さと優しさは同じなのです。貴方は愛する方を思いやる強さがある」
梨央は縣を見上げる。
「…縣様…」
「大丈夫、どのような選択をされようと、梨央さんと綾香さんの愛の絆は決して切れることはありません。…お二人は運命によって結びつけられているのですから…」
縣は梨央を励ますように明るく笑う。
「…梨央さんをずっと見守ってきた薔薇の番人が保証するのですから間違いありません」
梨央の美しい瞳から透明な涙が溢れ、白く滑らかな頬を伝う。
「…縣様…ありがとうございます…私、縣様に出会えて幸せでした…」
縣は優しく梨央の肩を撫で、ポケットからハンカチを取り出し、梨央に渡す。
「ありがとうございます…私もですよ…」
梨央は縣のハンカチに顔を埋め、静かに涙を流し続けた。
そんな梨央の肩を、縣はまるで父親のようにそっと優しく抱くのだった。