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真珠浪漫物語
第5章 秘密と嘘
同じ頃、月城は資生堂パーラーに買い出しに来ていた。
端正な顔に珍しく優しい笑みを浮かべ、眼鏡を押し上げる。
…最近のお嬢様はお茶会にも積極的に参加されて人見知りも直られたようだし、ご褒美を差し上げなければな…。
特製のザッハトルテの受け取りを待っていると、後ろから声がかかる。
「北白川様の月城さんではなくて?」
振り返ると、叶男爵夫人が佇んでいる。
人好きするような笑顔を浮かべながら手を差し出す夫人。
月城は恭しく手を取り、夫人の手袋の上から軽くキスする。
「叶男爵夫人、お久しぶりでございます」
夫人は明るく笑う。
「本当にお久しぶりね!…梨央様が相変わらずお茶会に来て下さらないから、お付きのお美しい貴方も拝見できずにとても残念…」
「…今…なんと…」
思わず、耳を疑う月城。
「相変わらず梨央様は引っ込み思案でいらっしゃるのねと、九条様ともお話していたところなのよ?…まあ、梨央様はお身体もご丈夫ではないし、おとなしいご性格ですからお茶会のご参加が気重になられるのは仕方ないかもしれないけれど…」
月城の顔が蒼白になる。
「…申し訳ございません…」
月城の様子には気付かずに、にこにこ話しを続ける叶夫人。
「いえいえ、責めているのではないのよ。お気が向かれたらお気楽にいらしてくださいと、梨央様に伝えてね」
「…恐れ入ります。…必ずお伝えいたします」
「それでは、月城さん。ご機嫌よう」
叶夫人を温和な笑顔で丁寧に見送ると月城は、一変厳しい表情でタクシーを拾い、麻布の屋敷に取って返した。

帰宅した月城を待っていたのは、目を白黒させ慌てふためく運転手の上田であった。
「た、た、た、大変です!月城さん!…お嬢様が…梨央様が…どこかに失踪されてしまいました!」
「…な、なんだと⁈」
持っていたザッハトルテの箱を取り落とす。
「…あ、あの!浅草のカフェの歌手とです!あの歌手とご一緒にどこかに行ってしまわれたのです!」
「…⁉︎」
…梨央様…!
まさか…綾香様が梨央様を⁉︎
月城の見たこともないような衝動と怒りの表情に、上田は思わず言葉を失うのだった。
折しも、雷が鳴り出した。
…夏の嵐の走りであった。
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