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真珠浪漫物語
第21章 デビュッタント
大階段前に佇んでいたのは、縣礼也とジュリアン・ド・ロッシュフォールであった。
縣もジュリアンも上質な黒の燕尾服とホワイトタイを寸分の隙もなく着こなしており、注目を集めている。
通り掛かる令嬢は縣の美丈夫ぶりと、ジュリアンの華やかな美貌にうっとりと見惚れている。
ジュリアンは梨央の美しい晴れ姿が眼に入った瞬間、目を輝かせながら両手を広げ、駆け寄った。
「梨央さん!おお…なんという美しさでしょう!貴方は正に地上に舞い降りた私の天使…!…痛ッ…!」
ジュリアンの美しい巻き毛の頭を綾香が手に持っている扇で容赦なく叩いた。
「な、何をなさるのですか⁈綾香さん!」
「ほんっとに懲りないわねえ。梨央に手を出すなって言ってんの!」
慌てて月城が綾香を嗜める。
「綾香様!そのように乱暴なことを!」
「まあまあ、せっかくの晴れの場所です。皆で仲良くやりましょう」
縣が大人の分別で和ませるように声をかけた。
そして、梨央の美しい正装を見つめ、しみじみと声をかけた。
「…本当にお美しいお姿です。梨央さん…。よくぞここまでお美しく気高くお育ちになられました…」
感に耐えたような縣の言葉に梨央も涙ぐむ。
「…縣様…。縣様のお陰です。私をずっと大切に慈しんで下さったからこそ…」
「…梨央さん…」
梨央は縣を見つめ、微笑む。
「縣様の愛情に心から感謝申し上げます。…それから…」
梨央は傍に付き添う月城を振り返る。
「月城、貴方にも。…私がこれまで無事に育ってこられたのは、貴方がいたからです。貴方がいなければ、今の私はなかったでしょう。…ありがとう、月城…」
月城の端正な眼鏡の奥の瞳が驚いたように見開かれる。
「…梨央様…!」
そして、後ろを向き、声を震わせる。
「…お止めください…そんな…お礼など…」
縣は優しく月城の肩を叩く。
「冷静沈着な君らしくないな。君はよくやった。伯爵も今日の梨央さんをご覧になったら、きっと感謝のお気持ちで一杯になられるはずだ」
「縣様…」
月城は目頭を押さえる。
…梨央様…。
初めてお会いした時からずっと、お慕いしていた私の麗しき主人…。
余りに美しすぎて…清らかすぎて、触れることなど考えられなかった禁断の白薔薇…。
…でも、これで良かったのだ。
美しき白薔薇は遠くにありて見護るものなのだ。
…月城はゆっくり振り返り、梨央にいつもの微笑みを返したのだった。
縣もジュリアンも上質な黒の燕尾服とホワイトタイを寸分の隙もなく着こなしており、注目を集めている。
通り掛かる令嬢は縣の美丈夫ぶりと、ジュリアンの華やかな美貌にうっとりと見惚れている。
ジュリアンは梨央の美しい晴れ姿が眼に入った瞬間、目を輝かせながら両手を広げ、駆け寄った。
「梨央さん!おお…なんという美しさでしょう!貴方は正に地上に舞い降りた私の天使…!…痛ッ…!」
ジュリアンの美しい巻き毛の頭を綾香が手に持っている扇で容赦なく叩いた。
「な、何をなさるのですか⁈綾香さん!」
「ほんっとに懲りないわねえ。梨央に手を出すなって言ってんの!」
慌てて月城が綾香を嗜める。
「綾香様!そのように乱暴なことを!」
「まあまあ、せっかくの晴れの場所です。皆で仲良くやりましょう」
縣が大人の分別で和ませるように声をかけた。
そして、梨央の美しい正装を見つめ、しみじみと声をかけた。
「…本当にお美しいお姿です。梨央さん…。よくぞここまでお美しく気高くお育ちになられました…」
感に耐えたような縣の言葉に梨央も涙ぐむ。
「…縣様…。縣様のお陰です。私をずっと大切に慈しんで下さったからこそ…」
「…梨央さん…」
梨央は縣を見つめ、微笑む。
「縣様の愛情に心から感謝申し上げます。…それから…」
梨央は傍に付き添う月城を振り返る。
「月城、貴方にも。…私がこれまで無事に育ってこられたのは、貴方がいたからです。貴方がいなければ、今の私はなかったでしょう。…ありがとう、月城…」
月城の端正な眼鏡の奥の瞳が驚いたように見開かれる。
「…梨央様…!」
そして、後ろを向き、声を震わせる。
「…お止めください…そんな…お礼など…」
縣は優しく月城の肩を叩く。
「冷静沈着な君らしくないな。君はよくやった。伯爵も今日の梨央さんをご覧になったら、きっと感謝のお気持ちで一杯になられるはずだ」
「縣様…」
月城は目頭を押さえる。
…梨央様…。
初めてお会いした時からずっと、お慕いしていた私の麗しき主人…。
余りに美しすぎて…清らかすぎて、触れることなど考えられなかった禁断の白薔薇…。
…でも、これで良かったのだ。
美しき白薔薇は遠くにありて見護るものなのだ。
…月城はゆっくり振り返り、梨央にいつもの微笑みを返したのだった。