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真珠浪漫物語
第21章 デビュッタント
謁見の間で、今年デビューする令嬢達の対面儀式が厳かに始まる。
玉座に座る両殿下に、名前を呼ばれた令嬢は恭しく挨拶に進み出る。
多くの令嬢達の中でも、綾香と梨央は群を抜いて美しく気高く、光り輝いている。
二人は揃いのティアラをつけていた。
プラチナでできた冠に宇和島産の極上真珠を贅沢に使ったそれは、縣よりの贈り物であった。

遠目にその光景を見つめる月城の目に再び涙が光る。
…梨央様は本当にお美しくご成長遊ばされた。
そして…梨央様は、このまま遠くに行かれてしまうのか…。
月城の胸に何とも言えない淋しさが去来した。

「…梨央さんのデビューは君の悲願だったな…。身体がお弱かったから、私も気を揉んだが、実にご立派に成長された…」
月城の肩に温かな手が置かれる。
「…縣様…」
「梨央さんは君の作品だ。…君は大した執事だよ」
縣は穏やかに笑う。
「…いえ。…私など…。ただ、私は貧しい漁村から出て来て…お屋敷で梨央様を初めて拝見した時の感動は今も鮮やかに胸に残っております。…梨央様は本当にお美しかった…教会で見た絵本の天使のようでした。このお美しい方をお護りする為ならなんでもしよう!と心に誓ったのです」
「…君も白薔薇の姫君をお護りする騎士なのだな」
「はい。及ばずながら…。しかし、私の役目はどうやら終わったようです。…梨央様は間もなく綾香様と旅立たれるでしょう…」
縣は微笑んだ。
「例えそうだとしても、君の執事としての偉業は消えやしないさ。…二人の番だ…」
縣の声に、視線を上げる。
玉座の前まで、綾香と梨央は二人並んで優雅に滑るように進み出る。
美しいお辞儀をした後、妃殿下に何か話しかけられ、綾香と梨央はにこやかに柔らかい微笑を浮かべ、返答をし、互いに顔を見合わせ、嬉しそうに笑った。
その笑顔はこの世のものとは思えないほどに美しく、神々しく、そして艶やかで、観ている人々の心を掴まずにはいられない輝きを放っているものだった。

…挨拶を終え、優雅に退出しながらふと、梨央は月城を見た。
そして、出逢った時と寸分違わぬ清らかな微笑を浮かべ、わずかに頷いた。
…梨央様…!
月城の眼鏡がきらりと光る。

「あ!梨央さんが!梨央さんが僕に笑った!梨央さ〜ん!」
いつの間にか側に来ていたジュリアンが、興奮して手を振る。
「…君は実におめでたいね…」
縣は苦笑しながら溜息を吐いた。

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