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真珠浪漫物語
第21章 デビュッタント

対面式が滞りなく終了すると、広間では賑やかに弦楽四重奏が奏でるワルツが流れ、舞踏会が華々しく幕を開く。
正装した下僕達が、シャンパングラスを紳士、淑女に配り、それらを片手に華やかに、そこかしこで談笑が始まり、貴族の青年達がデビューを終えたばかりの令嬢たちにダンスを申し込む。
綾香と梨央の前には踊りを申し込む青年達や紳士達が溢れ、身動きが取れないほどだ。
それを楽しげに見守っている縣の元に、梨央が青年達やの誘いを申し訳なさ気に断りながら近づいて来た。
「…縣様…あの…よろしければ、最初のダンスを私と踊っていただけませんか?」
おずおずと申し込む。
縣は目を見張った。
「…梨央さん…。よろしいのですか?」
「はい。…私、デビュッタントの最初のワルツは縣様と決めていたのです」
恥じらうように笑う梨央に、縣は少年のように胸が高鳴るのを感じた。
「…ありがとうございます、梨央さん。では…」
縣が手を差し伸べる。
梨央の白いレースの手袋をした華奢な手がそれに重ねられる。
縣は梨央の手を取り、優雅に広間の中央へと進み出る。
美しいワルツの調べに合わせて、梨央を巧みにリードする縣。
長身で、逞しい体躯の縣はダンスも達者で、常に注目の的なのだが、今日は北白川伯爵令嬢の妹姫、梨央と踊っているので、更に視線が集まる。
やや緊張気味にステップを踏む梨央を縣は優しく見下ろす。
「…そういえば、二度目ですね。梨央さんとダンスを踊るのは…」
「…え?」
梨央は不思議そうな顔をした。
縣は懐かしそうな表情で続ける。
「…あれは確か…梨央さんが7歳の時、ワルツを教えてと言われて、お屋敷の温室で踊ったことがありました」
「ああ…そういえば…」
梨央は恥ずかしそうに笑う。
「お父様が舞踏会に行かれるのが羨ましくて、連れていってと駄々を捏ねたのです。そうしたらお父様が…ワルツが踊れるようになったらね…と仰ったので、遊びにいらした縣様に、ワルツを教えて下さい!と我儘を申したのですわ。…縣様には本当にご迷惑ばかりお掛けして…」
梨央をしっかりリードしながら見つめる。
「…私は嬉しかったのですよ。梨央さんにお願いされて…梨央さんが、皆に見られると恥ずかしいと仰って、温室で練習したのですよね。蓄音機を持ち込んで…懐かしい想い出です…」
縣の微笑みが梨央を包み込む。
「…縣様…」
正装した下僕達が、シャンパングラスを紳士、淑女に配り、それらを片手に華やかに、そこかしこで談笑が始まり、貴族の青年達がデビューを終えたばかりの令嬢たちにダンスを申し込む。
綾香と梨央の前には踊りを申し込む青年達や紳士達が溢れ、身動きが取れないほどだ。
それを楽しげに見守っている縣の元に、梨央が青年達やの誘いを申し訳なさ気に断りながら近づいて来た。
「…縣様…あの…よろしければ、最初のダンスを私と踊っていただけませんか?」
おずおずと申し込む。
縣は目を見張った。
「…梨央さん…。よろしいのですか?」
「はい。…私、デビュッタントの最初のワルツは縣様と決めていたのです」
恥じらうように笑う梨央に、縣は少年のように胸が高鳴るのを感じた。
「…ありがとうございます、梨央さん。では…」
縣が手を差し伸べる。
梨央の白いレースの手袋をした華奢な手がそれに重ねられる。
縣は梨央の手を取り、優雅に広間の中央へと進み出る。
美しいワルツの調べに合わせて、梨央を巧みにリードする縣。
長身で、逞しい体躯の縣はダンスも達者で、常に注目の的なのだが、今日は北白川伯爵令嬢の妹姫、梨央と踊っているので、更に視線が集まる。
やや緊張気味にステップを踏む梨央を縣は優しく見下ろす。
「…そういえば、二度目ですね。梨央さんとダンスを踊るのは…」
「…え?」
梨央は不思議そうな顔をした。
縣は懐かしそうな表情で続ける。
「…あれは確か…梨央さんが7歳の時、ワルツを教えてと言われて、お屋敷の温室で踊ったことがありました」
「ああ…そういえば…」
梨央は恥ずかしそうに笑う。
「お父様が舞踏会に行かれるのが羨ましくて、連れていってと駄々を捏ねたのです。そうしたらお父様が…ワルツが踊れるようになったらね…と仰ったので、遊びにいらした縣様に、ワルツを教えて下さい!と我儘を申したのですわ。…縣様には本当にご迷惑ばかりお掛けして…」
梨央をしっかりリードしながら見つめる。
「…私は嬉しかったのですよ。梨央さんにお願いされて…梨央さんが、皆に見られると恥ずかしいと仰って、温室で練習したのですよね。蓄音機を持ち込んで…懐かしい想い出です…」
縣の微笑みが梨央を包み込む。
「…縣様…」

