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真珠浪漫物語
第21章 デビュッタント
…縣の脳裏に幼い梨央と踊った温室の風景がよぎる。

青いドレスのいとけない梨央の小さな手を握り、ゆっくりステップを踏んだ。
長身の縣は小さな梨央に合わせて、始終背を屈まなければならなかったがそれすらも嬉しかった。
梨央の真剣な表情と、ステップが踏めた時の花が咲いたような笑顔は今も忘れられない…。
温室の蒸せ返るような薔薇の香気、蓄音機から流れるヨハン・シュトラウス、林檎の香りがする幼い最愛の人、
…全ては夢のように美しい想い出の中だ…。

今、この腕の中にいるのはこの上なく美しく臈長けた真珠のように無垢な1人のレディ…。
梨央はいつの間にか、美しい蝶のように変体し、観るものを酔わせずにはいられない類まれなる美貌の令嬢へと成長した。
…私がそうさせたのではないのが残念だが…
縣は少し苦笑いする。

梨央が、気遣わしげに尋ねる。
「…縣様は…ご結婚はなさらないのですか?」
責任を感じているのだろうか。
縣は明るく笑った。
「…梨央さんほどの方はなかなか見つかりません」
「…でも…」
縣は戯けたようにウィンクする。
「梨央さんをお見護りするために私の一生があるというのもなかなかロマンチックで良いものです。…なにしろ私はアーサー王の物語が大好きですからね」
梨央は美しい瞳を潤ませる。
「…縣様…」


少し離れたところでワルツを踊りながらジュリアンはやきもきする。
「…梨央さん…アガタと何を話しているのかな…」
「無粋な真似はしなさんな。…折角、梨央が自分からワルツを申し込んだんだからさ」
…なんとパートナーは綾香である。
「だからって、何で私が綾香さんと踊らなきゃならないんですか!恋敵と‼︎」
ジュリアンは膨れる。
「放っておくと、あんた梨央と縣さんの邪魔しそうなんだもん」
にやりと笑う。
「…全く…!…でも…綾香さん…ワルツ、お上手ですね」
人の良いジュリアンは目を輝かせる。
「でしょ?…今夜はデビュッタントだからさ。休戦してダンスを楽しみましょう。monsieur?」
美しい瞳でウィンクされ、ジュリアンは一瞬どきりとした。
咳払いをするジュリアン。
「わかりましたよ、mademoiselle綾香…貴方はやはり凄い方だ。très bien‼︎」
ジュリアンも極上の笑みを浮かべ、二人はふわりとした空気感のまま見事なワルツを披露し、列席の人々の羨望の溜息を誘うのだった…。
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