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真珠浪漫物語
第21章 デビュッタント
月城はお付きの控え室から、バルコニーへと足を運んでいた。
広間からは華やかな音楽が聞こえ、紳士、淑女が笑いさざめく声も伝わって来る。
月城はバルコニーの手摺にもたれかかりながら、胸ポケットから煙草を取り出し、火を点けた。
一服吸い込んだ所で、背後から声がかかる。
「…煙草…吸っていたのね…知らなかった…」
はっと振り返ると、梨央が微笑みながら佇んでいた。
「梨央様…」
慌てて煙草の火を消す。
梨央がゆっくり近づく。
「私が喘息で煙が良くないから、私の前では吸わなかったのね…?」
「…はい…」
「ありがとう…月城…。貴方には感謝してもし足りない…。私がお母様を亡くして、お父様が不在がちでも寂しくなかったのは、貴方のお陰よ…」
「とんでもございません。…私は執事としての責務を果たしただけでございます」
梨央は首を振る。
「いいえ。私は覚えているわ。貴方が私の為にしてくれた沢山のことを…」
そして、梨央はそのほっそりした手を月城に差し伸べる。
「…踊って、月城…」
月城は端正な眼鏡の奥の目を見張る。
「いけません!執事とお嬢様が舞踏会で踊るなど…とんでもないことです」
梨央は諦めない。
「ここでならいいじゃない?バルコニーよ?誰も見ていないわ」
「…しかし…!」
「…私はデビュッタントの今夜、貴方と踊りたいの。月城…」
「…梨央様…」
「…踊って…、月城…」
月城は、何かを言いかけて口をつぐみ、普段の完璧な執事の顔を脱ぎ捨て…はにかんだような笑みを浮かべ、頷いた。

梨央の華奢な美しい手を引き寄せ、広間から聞こえる音楽に合わせ、月城は優しく梨央をリードし踊り始める。
梨央がふと思い出し笑いをする。
「…どうされました?」
「…昔、お父様にどうしても会いたいと駄々を捏ねて、泣き喚いて貴方を困らせた事があったわね」
「ああ…。あの頃から旦那様は一年のほとんどを外国でお暮らしでしたから…」
「クリスマスにはお帰りになると仰ったのに、船が遅れてイブにお帰りになれなくて…寂しくてベッドでずっと泣いていたら…貴方が来てくれた…サンタの格好で」
梨央はくすくす笑いだした。
月城は苦笑する。
「私はまだ二十歳になったばかりで…幼い梨央様をどうお慰めしたらいいか分からなくて、苦肉の策でした」
月城は昔を思い出すように、遠い目をした…。

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