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真珠浪漫物語
第21章 デビュッタント
…クリスマスイブだと言うのに、旦那様がお帰りにならず、一日中しくしくと泣き続ける梨央様がお可哀想で、針仕事が得意なメイドにサンタクロースの衣装を作ってもらった。
…梨央様のお部屋に旦那様のプレゼントを持って
「メリークリスマス!サンタクロースですよ!」と一世一代の大芝居を打ったのだ。

梨央様は、私の姿を見てぴたりと泣き止み、その後、弾けたように笑い転げた。
…何が可笑しいのだろう?
不思議に思っていると、梨央様が尚も笑いながら
「…月城でしょ?だって…眼鏡!眼鏡かけてるもの!眼鏡をかけているサンタさんなんていないわ!」
と言われたのだ。
…しまった!眼鏡を外すのを忘れていた!
私は呆然とした…。

梨央はその時のことを思い出したのか、くすくす笑いだす。
「あの時の月城の顔…!一生忘れられないわ」
「…一生の不覚です」
月城はむすっとした。
「…嬉しかった…お父様の不在も忘れるくらい、嬉しくて楽しかったのよ…」
「…梨央様…」
梨央は微笑みながら、月城を見上げる。
そして真顔になり、
「…月城はずっと変わらずに忠誠を尽くしてくれたのに私は、月城が望むような伯爵令嬢になれなかった。…ごめんなさい、月城…許してね…」
月城は目を見開き、梨央を抱きしめる腕に力を入れる。
「いいえ!決してそんな!…梨央様は、私の誇りです。梨央様は私の最高のご主人様です…!」

…こんなにお美しい白薔薇をずっとお側で見護らせていただいた…。
これ以上、幸せな執事が他にいるだろうか。

梨央様はきっと気づかれることはないだろう。
私の密やかな片恋を…
…しかし、これで良いのだ。
私の片恋は胸に秘めたまま、そっと永遠に眠らせる…
それで良いのだ…。

「…ありがとう。月城…大好きよ」
梨央は出会った時のように、屈託なく白い花のように微笑んだのだ。
…広間のヨハン・シュトラウスはまだ奏で続けられている…
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