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真珠浪漫物語
第21章 デビュッタント

綾香の美しい眉が顰められ、梨央を見つめる。
「…なぜ?イタリアに行くのが嫌になったの?」
「違うわ…」
「では…」
綾香の美しい瞳が悲しみで曇る。
「私と一緒に行きたくないの?」
梨央は必死で首を振る。
「違うわ!私はお姉様と一緒にいたい!片時も離れたくない!ずっとずっとお側にいたい!」
「じゃあなぜ⁈」
梨央は綾香の手をぎゅっと握りしめる。
「…私、ずっと考えていたの。…私がもしお姉様とご一緒にイタリアに行っても、何も出来なくてお姉様に頼ってお姉様の足を引っ張るだけだ…て。お姉様のお勉強のお邪魔をするだけだ…て」
「そんなこと!…私は梨央の面倒を見ることなんてなんでもないのよ。…むしろ、貴方の世話を焼きたいの」
綾香は梨央に子供に諭すように言い聞かせる。
梨央は首を振る。
「…それではだめなの…。私、今までずっと誰かに護られて生きてきた…お父様に、月城に、縣様に…そしてお姉様に。…綺麗な鳥籠にずっと暮らしていて、そこから出ることなんて考えてもみなかった…ううん…怖かったの…外の世界に出て傷つくことが…。だから、私は鳥籠の中でしか生きられないと勝手に決め付けていたの。…自分の保身のために…」
「梨央…」
「でも、お姉様と出逢って、愛し合って…思ったの。…お姉様に護られて生きるのでなく、自分の足でちゃんと立ちたい。お姉様とちゃんと並んで、同じものを見たい。…そしていつかは、私がお姉様を護れるようになりたい。強くなりたい!…て」
梨央の真摯な言葉を綾香は静かに聞いていた。
「…私とイタリアで、一緒に強くなるのではだめなの?」
「…考えたわ。でも、私は異国に行ったらきっとお姉様を頼ってしまう。…それに…」
梨央はその澄んだ美しい瞳で綾香を見つめた。
今までにない強い光がそこにはあった。
「…私には北白川家を護る義務があるの。お父様もお姉様もご不在になって、私まで外国に行くわけにはいかない。…今まで私をずっと支えてくれた月城や、ますみや、すみれや…全ての人達の為にも、私があの家の主人として為すべきことをしなければ…て。…そして、いつかお姉様やお父様が安心してお帰りになれるよう、私があの家を…皆を護る。…何ができるか分からないけれど、きっと失敗すると思うけれど…でも、私がやらなくてはいけないと思うの…」
…暫くの沈黙の末に、綾香は小さく溜息を吐いた。
そして、静かに笑った。
「…なぜ?イタリアに行くのが嫌になったの?」
「違うわ…」
「では…」
綾香の美しい瞳が悲しみで曇る。
「私と一緒に行きたくないの?」
梨央は必死で首を振る。
「違うわ!私はお姉様と一緒にいたい!片時も離れたくない!ずっとずっとお側にいたい!」
「じゃあなぜ⁈」
梨央は綾香の手をぎゅっと握りしめる。
「…私、ずっと考えていたの。…私がもしお姉様とご一緒にイタリアに行っても、何も出来なくてお姉様に頼ってお姉様の足を引っ張るだけだ…て。お姉様のお勉強のお邪魔をするだけだ…て」
「そんなこと!…私は梨央の面倒を見ることなんてなんでもないのよ。…むしろ、貴方の世話を焼きたいの」
綾香は梨央に子供に諭すように言い聞かせる。
梨央は首を振る。
「…それではだめなの…。私、今までずっと誰かに護られて生きてきた…お父様に、月城に、縣様に…そしてお姉様に。…綺麗な鳥籠にずっと暮らしていて、そこから出ることなんて考えてもみなかった…ううん…怖かったの…外の世界に出て傷つくことが…。だから、私は鳥籠の中でしか生きられないと勝手に決め付けていたの。…自分の保身のために…」
「梨央…」
「でも、お姉様と出逢って、愛し合って…思ったの。…お姉様に護られて生きるのでなく、自分の足でちゃんと立ちたい。お姉様とちゃんと並んで、同じものを見たい。…そしていつかは、私がお姉様を護れるようになりたい。強くなりたい!…て」
梨央の真摯な言葉を綾香は静かに聞いていた。
「…私とイタリアで、一緒に強くなるのではだめなの?」
「…考えたわ。でも、私は異国に行ったらきっとお姉様を頼ってしまう。…それに…」
梨央はその澄んだ美しい瞳で綾香を見つめた。
今までにない強い光がそこにはあった。
「…私には北白川家を護る義務があるの。お父様もお姉様もご不在になって、私まで外国に行くわけにはいかない。…今まで私をずっと支えてくれた月城や、ますみや、すみれや…全ての人達の為にも、私があの家の主人として為すべきことをしなければ…て。…そして、いつかお姉様やお父様が安心してお帰りになれるよう、私があの家を…皆を護る。…何ができるか分からないけれど、きっと失敗すると思うけれど…でも、私がやらなくてはいけないと思うの…」
…暫くの沈黙の末に、綾香は小さく溜息を吐いた。
そして、静かに笑った。

