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真珠浪漫物語
第7章 白薔薇の館へ
綾香は浴衣を脱ぎ、真紅のチャイナドレスに着替えた。
その派手な格好に、月城が眼鏡を押し上げながら綾香を睨んだ。
「…もう少しおとなしいお洋服をお持ちではないのですか?」
「ないよ。これが私の持っている服で一番高いやつだもん」
髪を無造作に結い上げる。
鏡台の前の三ツ矢サイダーの瓶の中でまだ綺麗に咲き誇っていた白薔薇を髪の根元に飾った。
後ろに立っていた梨央と鏡の中で目が合う。
綾香は鏡越しに笑いかけた。
「あんたにもらった薔薇だよ」
梨央は頬を染めて笑った。
「…お姉様…」
綾香は鏡台の中から大切に仕舞われていた真珠のピアスを取り出した。
梨央がつぶやく。
「…綺麗ですね」
「あんたなんかこんなのたくさん持っているんだろうけど、私の唯一の宝物さ。…死んだ母さんの形見なの。…どんなに貧乏でもこれだけは手放さなかった…昔、大切な人にもらったの…て、嬉しそうに言っていたな…もしかしたら…あんたの父さんだったのかもね」
わざとなんでもないように言って、ピアスを耳に飾った。
「きっと、お父様ですわ…お姉様、とても良くお似合いです」
綾香は笑いながら梨央の頬を軽く抓った。
「ありがとう、お姫様」
梨央は嬉しそうに頬に触れる。

大きめの鞄に、母親の位牌と、たくさんの楽譜と数枚のレコードを入れる。
「…これは?」
「私がいつか歌いたい楽譜。…もっともっと歌が上手くなったら歌いたいんだ。お給料が入ったら少しずつ買いためていたの」
梨央が綾香に抱きつく。
「お姉様…素敵…!お姉様ならきっといつか世界的な歌手になれますわ!」
「ありがとう」
梨央の手を握り返す。
月城は相変わらず嫉妬めいた眼差しで綾香を見つめている。
「さあ、用意は出来たよ。焼き餅焼きの執事さん」
ニヤリと笑って見せる綾香。
月城は憮然としながらも
「…他にお持ちになるものはないのですか?」
と気遣う。
「ないよ。私の大切なものはこのピアスと母さんの位牌と楽譜だけ。これさえあれば私は何もいらない。いつでもどこにでも行ける。…自由なんだ」
そう言ってウィンクしてみせた綾香の顔が余りに美しく、月城は一瞬綾香に見惚れた。

…この方は…やはり旦那様の落とし胤なのかもしれない。
見かけは蓮っ葉だが、心は毅然として、自由で、気高い…

月城は敢えて素っ気なく答えた。
「承知いたしました。それではお嬢様方、お車の方へ…」

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