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真珠浪漫物語
第2章 浅草オペラカフェ
綾香はアンニュイに、しかし情感をこめて、歌を歌う。
時には演奏のピアノに凭れかかり、客席にセクシーな眼差しを投げかけながら…。

…と、客席におよそこの店には不似合いな高級なドレスを身にまとった暗がりでもその美しさがわかる一人の少女を見つける。
少女は綾香を喰いいるように、また、夢見るように見つめている。
…どこの良いところのお嬢様かな。
物好きにもこんな店に来ちゃって…
となりの色男は、お付き?
…いいご身分だねえ…。

綾香は最後の歌を唄い上げると、妖艶にお辞儀をする。
客席からは酔客合わせて、歓声と拍手が飛び交う。
あの少女も懸命に拍手をしている。
綾香は気まぐれに少女に、ウィンクを飛ばす。
少女は、パッと赤くなり、両手で顔を覆ってしまった。
…ウブだねえ…。
綾香はくすっと笑いながら袖に引っ込み、楽屋に帰っていった。

雑然とした楽屋の椅子に座り、一息ついて煙草に火をつけていると、客席係のボーイ、ケン坊が近づいてくる。
「綾香さん、お客様ですよ」
「客?」
「綾香さんとどうしてもお話したいってお客様が…。
それがすっごい美人で、上品で、しかも相当なお金持ちっぽいんですよ!この辺じゃあ見たことのないタイプですね。…可愛いかったなあ」
思い返すようにうっとりするケン坊。
…あの娘かな。
「ふ〜ん…パトロンにでもなってくれんのかなあ?」
ニヤリと笑う綾香。
「とにかく早く行ってあげてください!あ、1番テーブルですからね!」
ケン坊に急かされるまま、楽屋から出る綾香。
気怠げな表情のまま、新しい煙草に火をつけながら歩く。
…酔狂なお嬢様がいたもんだねえ。
でも、もしかしたら本当に私のパトロンになってくれるのかも知れないし…。
世間知らずなお嬢ちゃんは、どれくらい貢いでくれるかな…。
綾香の唇に冷ややかな笑みが浮かんでいる。
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