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第2章 浅草オペラカフェ

その頃、客席では梨央がどきどきしながら綾香の訪れを待っていた。
「…来てくださるかしら…」
「…本当にあの方が、旦那様の落とし胤でいらっしゃるのでしょうか…大変な美人ではいらっしゃいますが、あの婀娜めいた表情…とてもお嬢様と血が繋がっているようには見えません」
月城は先ほどの色香に満ちた綾香の顔を思い出し、眉を顰めた。
「月城！なんてことを…」
と、そのとき二人の頭上で蓮っ葉な声が聞こえた。

「私に用って…あんた達？」
梨央は慌てて、綾香を見上げ、そして思わずため息を漏らした。
「…お姉様…！お姉様なのですね？」
黒目がちの瞳からは透明な涙が溢れでる。
「はあ？…何言ってんの？あんた、綺麗だけど頭おかしいの？」
綾香は気味が悪そうにたじろぐ。
月城がすかさず綾香を嗜める。
「…お言葉に気をつけていただきますように…こちらのお方は北白川伯爵家のご令嬢、梨央様でいらっしゃいます」
むっとする綾香。
「だから？…高貴な華族様がこんな場末のカフェに来て…一体何の用？」
と、そのとき梨央が感極まり、綾香に抱きつく。
「お姉様！…やっとお会いできました！私は貴女の妹です」
「はあ？…やっぱ頭おかしいわ、あんた…」
「お言葉に気をつけて下さい」
月城が冷たい目で綾香を睨む。
梨央が月城を制する。
「良いのです。月城。…信じられなくても無理はありません。私も、お父様からのお手紙を読んだ時に、余りの事実に茫然といたしました」
梨央は綾香の腕を離そうとしない。
愛しそうにじっと綾香を見上げている
「…あのさ…ちょっと、わかりやすく話してくれる？あたし、バカだからさ」
綾香は観念したように肩をすくめる。
梨央は、綾香をじっと見つめる。
「わかりました。お姉様。今、ご説明いたします。私とお姉様がなぜ姉妹なのか…」