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真珠浪漫物語
第9章 赤薔薇の伯爵令嬢
月城は端正な顔に儀礼的な笑みを浮かべ、続ける。
「…綾香様はワルツは踊れますか?」
「踊れるよ」
ことも無げに答える。
月城は眉をあげて、聞き返す。
「…ワルツですよ…?」
綾香は揶揄うように月城を見つめる。
「カフェの歌手はワルツなんてお上品なダンスは踊れないと思ってる?」
「い、いえ、そんな…」
「踊れるよ。言ったでしょ?私の贔屓のお客様が外国人で、時々欧米人専用クラブとかに連れて行ってくれたの。で、ワルツを教えてくれた」
月城はまだ納得が行かないようだ。
「…そうですか…」
綾香は勢いよく立ち上がる。
「そんなに疑うなら踊ってみる?あんた、ワルツは踊れる?」
月城は狼狽する。
「…お、踊れますが…いえ、そういう問題ではなく!お嬢様と執事がダンスを踊るなど…あり得ないことです!」
梨央が頬を紅潮させながら手を叩く。
「いいじゃない!月城。…お姉様、月城はワルツの名手なのよ。お父様のおつきで舞踏会に上がった時など、月城目当てに夫人や令嬢が群がるほどなのですって!」
「お、お嬢様!」
綾香は明るく笑って手を差し伸べる。
「そりゃいいわ。…私と踊ってくださらない?ハンサムな執事さん」
綾香の艶やかな目が月城を誘う。
月城は、ため息をつき、しかし覚悟を決めたように一礼した。
「…恐れながら…よろしくお願いします」
「梨央、ピアノは弾けるよね?…皇帝円舞曲を弾いて」
「はい!お姉様!」
梨央は弾けるように立ち上がり、居間のグランドピアノに駆け寄る。

綾香と月城は手を取り合い、居間の中央に進む。
「…貴方には驚かされることばかりです…」
率直な言葉に
「カフェの歌手はヨハン・シュトラウスなんて知らないと思ってた?…仮にも私は歌手だよ?良い音楽はなんでも聴くよ。…まあ貧乏だったから音楽会は1番安い席にたまに潜り込めるくらいだったけどね」
屈託なく笑う。
「…失礼いたしました…」
月城は真摯に詫びた。
梨央の奏でる皇帝円舞曲が静かに聞こえ始める。
下僕やメイド達は何事が始まったのかとドアの隙間からこっそり覗き見ている。

月城は改めて、綾香に敬意を払って手を差し伸べる。
「…踊っていただけますか?…綾香様…」
綾香は花が咲いたように笑い、月城の手を握りしめる。
「…喜んで。生真面目な執事さん」


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