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真珠浪漫物語
第9章 赤薔薇の伯爵令嬢
月城は午前中の一通りの業務が終了した後に、綾香の基本的な学習の指導を担当することになった。
綾香の部屋の窓際の大きなマホガニーのテーブルで、二人の学習が始まる。
綾香の学習を見るようになって月城は驚かされたことがある。
それは、綾香の賢さ、勘の良さ、閃きなどだ。
計算や漢字の読み書きなどの能力は実際は屋敷の下僕達のレベルの遥か上だった。
「だって、計算や読み書きが出来なきゃどこも雇ってくれなかったからさ。長屋に出来のいい一高生がいたからその子に勉強習ったり、使い古しの教科書貰って自分で勉強したりしたのさ」
綾香は何でもないように言う。
月城は密かに感動していた。
…このお方はやはり、精神が貴族なのだ。
旦那様のお血筋を確かに引いていらっしゃる…。
気高いお心をお持ちだから、どんなに貧しい生活をされても、毅然とされ、輝いておられるのだ。
普段とは違う月城の眼差しを感じたのか、綾香はちょっと居心地悪そうに、わざとぶっきらぼうに言う。
「…なによ…可笑しい?」
月城は珍しく穏やかに微笑んだ。
「…いいえ…。綾香様はやはり旦那様のお子様だと確信したのです」
「あ〜!もしかして今まで疑ってた?」
月城を軽く睨みつける。
「…まあ、あのカフェでの綾香様を最初に拝見した時は…でも、今は…」
綾香に頭を下げる。
「…そのことを申し訳なく思っております」
綾香は慌てる。
「いいよ、そんな…私もガラが悪いのは確かだしさ」
一瞬、二人は顔を見合わせて吹き出した。
綾香はクスクス笑いながら、月城を見つめた。
「あんたって意外に面白い人なんだね」
月城はむっとした。
「…私は面白いなどと言われたことは未だかつて一度もありません!…執事に面白さは必要ないのです!」
綾香はお腹を抱えて笑う。
「あはは!そういうところが面白いって言うの。…あんたはここの代々執事の家柄なの?」
月城は静かに答える。
「…いいえ…。私は北陸の貧しい漁村の出です。…旦那様が政府のお仕事で給費生を探す視察に見えた時に私を見出して下さいました」
「…へえ…」
「…ですから、旦那様は私の恩人なのです。旦那様の為でしたら私は命も惜しくはございません。…勿論旦那様のお嬢様方の為にもです…」
綾香は優しく月城の手を握る。
「…あんた、良い執事さんなんだね」
月城は綾香の手を振り切ることが出来ない自分に驚く。
綾香の部屋の窓際の大きなマホガニーのテーブルで、二人の学習が始まる。
綾香の学習を見るようになって月城は驚かされたことがある。
それは、綾香の賢さ、勘の良さ、閃きなどだ。
計算や漢字の読み書きなどの能力は実際は屋敷の下僕達のレベルの遥か上だった。
「だって、計算や読み書きが出来なきゃどこも雇ってくれなかったからさ。長屋に出来のいい一高生がいたからその子に勉強習ったり、使い古しの教科書貰って自分で勉強したりしたのさ」
綾香は何でもないように言う。
月城は密かに感動していた。
…このお方はやはり、精神が貴族なのだ。
旦那様のお血筋を確かに引いていらっしゃる…。
気高いお心をお持ちだから、どんなに貧しい生活をされても、毅然とされ、輝いておられるのだ。
普段とは違う月城の眼差しを感じたのか、綾香はちょっと居心地悪そうに、わざとぶっきらぼうに言う。
「…なによ…可笑しい?」
月城は珍しく穏やかに微笑んだ。
「…いいえ…。綾香様はやはり旦那様のお子様だと確信したのです」
「あ〜!もしかして今まで疑ってた?」
月城を軽く睨みつける。
「…まあ、あのカフェでの綾香様を最初に拝見した時は…でも、今は…」
綾香に頭を下げる。
「…そのことを申し訳なく思っております」
綾香は慌てる。
「いいよ、そんな…私もガラが悪いのは確かだしさ」
一瞬、二人は顔を見合わせて吹き出した。
綾香はクスクス笑いながら、月城を見つめた。
「あんたって意外に面白い人なんだね」
月城はむっとした。
「…私は面白いなどと言われたことは未だかつて一度もありません!…執事に面白さは必要ないのです!」
綾香はお腹を抱えて笑う。
「あはは!そういうところが面白いって言うの。…あんたはここの代々執事の家柄なの?」
月城は静かに答える。
「…いいえ…。私は北陸の貧しい漁村の出です。…旦那様が政府のお仕事で給費生を探す視察に見えた時に私を見出して下さいました」
「…へえ…」
「…ですから、旦那様は私の恩人なのです。旦那様の為でしたら私は命も惜しくはございません。…勿論旦那様のお嬢様方の為にもです…」
綾香は優しく月城の手を握る。
「…あんた、良い執事さんなんだね」
月城は綾香の手を振り切ることが出来ない自分に驚く。