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真珠浪漫物語
第11章 嵐の予感
綾香が千に駆け寄ると、千が嬉しそうに笑った。
「綾香!良かった!あれから全く音沙汰ないし、どうしているかなあって心配で心配でさ…」
「…千…。ありがとう…」
千は綾香がずっと弟のように可愛がっていた存在だった。
千も綾香を姉のように慕い、時には雑に扱われながらもどんな時も綾香に着いて行く一途で健気な性格なのだ。
「綾香、元気?…あの意地悪そうな執事に虐められてない?」
案じる千に笑顔を見せ
「大丈夫。もう仲良くなったから。今、あの色男執事に勉強教わってるんだ」
「…へえ…。…ねえ、綾香。…あの執事のこと好きになったりしてないよね?」
「へ?何バカなこと言ってんのさ。…それより、千、あれちょうだい、あれ」
と、煙草を吸うジェスチャーをする。
「あ、煙草ね。…はい」
千は鉄格子越しに煙草を一本渡し、火をつけてやる。
綾香は煙草を旨そうに吸い、ふっと息を吐く。
「…あ〜、染み渡るわあ〜」
「綾香、煙草吸ってないの?禁止されてるの?」
「…そうじゃないけど…梨央が煙草苦手みたいだから止めてるんだ。あの子、身体弱いからね」
「…ふうん…綾香…本当にあのお姫様が好きなんだね」
千はしみじみと言う。
「…え?」
「今までそんなことで煙草止めたことないじゃん」
「…そうかな…」
戸惑う綾香。
「そうだよ。…綾香、本当にこんなすごいところのお嬢様なんだね…なんだか綾香が別の世界に行っちゃったような気がして寂しいよ…」
千はシュンと肩を落とす。
「なに落ち込んでるんだよ、千!それよりさ、カフェのみんなは元気?」
「うん、元気だよ。みんな綾香の歌を聴きたがっているよ。バンドのみんなも、店のみんなも…もちろんお客様も。綾香はいつ戻るんだって毎日聞かれる…ねえ、もうカフェには戻ってこないの?」
「…戻りたいのは山々なんだけどさあ…」
口を濁していると、綾香の背後の方から低いバリトンの美声が響いてきた。
「…綾香様…?綾香様…そちらにいらっしゃるのですか?」
綾香は慌てる。
「やば…月城だ!千、また来て!みんなに…おばさんにもよろしく伝えてね!」
と、慌ただしく煙草を千に渡す。
「わ、わかった!綾香も元気でね!」
千が素早く姿を消すのを見届けると、綾香は東屋の方に足早に戻った。
「綾香!良かった!あれから全く音沙汰ないし、どうしているかなあって心配で心配でさ…」
「…千…。ありがとう…」
千は綾香がずっと弟のように可愛がっていた存在だった。
千も綾香を姉のように慕い、時には雑に扱われながらもどんな時も綾香に着いて行く一途で健気な性格なのだ。
「綾香、元気?…あの意地悪そうな執事に虐められてない?」
案じる千に笑顔を見せ
「大丈夫。もう仲良くなったから。今、あの色男執事に勉強教わってるんだ」
「…へえ…。…ねえ、綾香。…あの執事のこと好きになったりしてないよね?」
「へ?何バカなこと言ってんのさ。…それより、千、あれちょうだい、あれ」
と、煙草を吸うジェスチャーをする。
「あ、煙草ね。…はい」
千は鉄格子越しに煙草を一本渡し、火をつけてやる。
綾香は煙草を旨そうに吸い、ふっと息を吐く。
「…あ〜、染み渡るわあ〜」
「綾香、煙草吸ってないの?禁止されてるの?」
「…そうじゃないけど…梨央が煙草苦手みたいだから止めてるんだ。あの子、身体弱いからね」
「…ふうん…綾香…本当にあのお姫様が好きなんだね」
千はしみじみと言う。
「…え?」
「今までそんなことで煙草止めたことないじゃん」
「…そうかな…」
戸惑う綾香。
「そうだよ。…綾香、本当にこんなすごいところのお嬢様なんだね…なんだか綾香が別の世界に行っちゃったような気がして寂しいよ…」
千はシュンと肩を落とす。
「なに落ち込んでるんだよ、千!それよりさ、カフェのみんなは元気?」
「うん、元気だよ。みんな綾香の歌を聴きたがっているよ。バンドのみんなも、店のみんなも…もちろんお客様も。綾香はいつ戻るんだって毎日聞かれる…ねえ、もうカフェには戻ってこないの?」
「…戻りたいのは山々なんだけどさあ…」
口を濁していると、綾香の背後の方から低いバリトンの美声が響いてきた。
「…綾香様…?綾香様…そちらにいらっしゃるのですか?」
綾香は慌てる。
「やば…月城だ!千、また来て!みんなに…おばさんにもよろしく伝えてね!」
と、慌ただしく煙草を千に渡す。
「わ、わかった!綾香も元気でね!」
千が素早く姿を消すのを見届けると、綾香は東屋の方に足早に戻った。