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真珠浪漫物語
第11章 嵐の予感
綾香は月城の前に現れると、にこやかに笑ってみせる。
「なに?どうかした?」
月城は鉄格子の方をちらりと見た。
「…どなたかとお話しされていましたか?」
「ううん。誰もいないよ。気のせいじゃない?」
「…そうですか…」
疑い深そうな眼差しの月城。
「…それよりもさ…」
と、綾香は話題を変える。
「…縣さんて…梨央の婚約者って本当?」
月城は一瞬戸惑うような表情をしたがすぐに元の端正な顔に戻る。
「…はい。本当です。…縣男爵様は旦那様がお決めになった梨央様の婚約者様でいらっしゃいます」
綾香は綺麗な眉をひそめる。
「…梨央はまだ18歳じゃない」
「縣男爵様のお父様と旦那様は学生時代からのご親友なのです。お身体が弱い梨央様を置いて海外に赴任されることをご心配された旦那様が、最初は後見人というような形で縣様にお願いされたと聞いております。…なにしろその頃は梨央様はまだ6歳でいらっしゃいましたから…」
「やだ、そいつロリコン?」
月城は咳払いをした。
「…お言葉にお気をつけください、綾香様。…縣様は最初は後見人というお立場でいらっしゃったのですが…年々お美しくなられる梨央様に惹かれていかれたのでしょう。梨央様が16歳になられたのを機に、正式に婚約者という形を取りたいと旦那様にお願いされたのです」
「…で?梨央は了承しているの?」
「…梨央様が旦那様のご意向に逆らわれるはずがありません。旦那様の選ばれる方に間違いはないと信じていらっしゃいますから…」
「なにそれ」
「縣男爵様は例え旦那様のご命令でなくとも、大変魅力的なお相手でいらっしゃると存じます。大きな財閥を所有し、その社長として敏腕を振るい、しかも大変な美男子でいらっしゃいます。社交界でも縣様に憧れるご令嬢は星の数ほどと伺っております。…梨央様も決してお嫌ではないはずです」
淡々と語る月城を綾香はじっと見つめ、
「…それで、あなたはいいの?」
「…はい?」
「あなたは梨央がその人と結婚してしまってもいいの?」
月城はふっと笑う。
「…いいも何も…梨央様のご結婚に私ごときが意見を述べるなど…」
綾香は月城を真顔で見据える。
「…意見じゃなくて、あなたの気持ちだよ。…あなた、梨央が好きなんでしょ?」
月城の顔色が変わった。
「…綾香様…な、何を馬鹿なことを…!」
「好きなんでしょ?梨央を…」
二人は暫し見つめ合う。
「なに?どうかした?」
月城は鉄格子の方をちらりと見た。
「…どなたかとお話しされていましたか?」
「ううん。誰もいないよ。気のせいじゃない?」
「…そうですか…」
疑い深そうな眼差しの月城。
「…それよりもさ…」
と、綾香は話題を変える。
「…縣さんて…梨央の婚約者って本当?」
月城は一瞬戸惑うような表情をしたがすぐに元の端正な顔に戻る。
「…はい。本当です。…縣男爵様は旦那様がお決めになった梨央様の婚約者様でいらっしゃいます」
綾香は綺麗な眉をひそめる。
「…梨央はまだ18歳じゃない」
「縣男爵様のお父様と旦那様は学生時代からのご親友なのです。お身体が弱い梨央様を置いて海外に赴任されることをご心配された旦那様が、最初は後見人というような形で縣様にお願いされたと聞いております。…なにしろその頃は梨央様はまだ6歳でいらっしゃいましたから…」
「やだ、そいつロリコン?」
月城は咳払いをした。
「…お言葉にお気をつけください、綾香様。…縣様は最初は後見人というお立場でいらっしゃったのですが…年々お美しくなられる梨央様に惹かれていかれたのでしょう。梨央様が16歳になられたのを機に、正式に婚約者という形を取りたいと旦那様にお願いされたのです」
「…で?梨央は了承しているの?」
「…梨央様が旦那様のご意向に逆らわれるはずがありません。旦那様の選ばれる方に間違いはないと信じていらっしゃいますから…」
「なにそれ」
「縣男爵様は例え旦那様のご命令でなくとも、大変魅力的なお相手でいらっしゃると存じます。大きな財閥を所有し、その社長として敏腕を振るい、しかも大変な美男子でいらっしゃいます。社交界でも縣様に憧れるご令嬢は星の数ほどと伺っております。…梨央様も決してお嫌ではないはずです」
淡々と語る月城を綾香はじっと見つめ、
「…それで、あなたはいいの?」
「…はい?」
「あなたは梨央がその人と結婚してしまってもいいの?」
月城はふっと笑う。
「…いいも何も…梨央様のご結婚に私ごときが意見を述べるなど…」
綾香は月城を真顔で見据える。
「…意見じゃなくて、あなたの気持ちだよ。…あなた、梨央が好きなんでしょ?」
月城の顔色が変わった。
「…綾香様…な、何を馬鹿なことを…!」
「好きなんでしょ?梨央を…」
二人は暫し見つめ合う。