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真珠浪漫物語
第12章 美しき薔薇の番人
ダイニングルームでは、厳かに昼食会が始まった。
下僕に注がれた食前酒を飲みながら、縣は慈愛に満ちた目で、梨央を見つめる。
「…暫くお会い出来ませんでしたが梨央さんは体調はいかがですか?また喘息の発作など起こされてはいませんか?」
細かく尋ねる様子は優しい父親や兄のようだ。
縣が梨央の世話を細やかに焼いているというのはどうやら事実のようである。

梨央は静かに微笑み答える。
「お陰様で…最近はとても体調が良いのです。…お姉様がこの家に来て下さってからずっと…毎日楽しいことばかりで…。丹羽先生にも驚かれるほどなのです」
梨央は綾香を見る。
綾香がナプキンで唇を抑えながら、謎めいた魅惑的な微笑を梨央に与える。
梨央はその瞬間、蕩けるような愉悦の表情を浮かべる。
長年、梨央と接しているが、縣はそのような梨央の表情をついぞみたことがなかった。
縣は驚いた。
ナプキンを広げながら縣は綾香に尋ねる。
「…綾香さんはこちらのお屋敷にいらして間もないのに、もう梨央さんと旧知の仲のようにお親しくていらっしゃいますね。…少々妬けるほどですよ」
綾香は小さく笑う。
「…梨央は…梨央さんは私の破天荒な性格に惹かれているのでしょう。梨央さんや縣さんの周りにはいないような人間ですからね」
「ほう…とおっしゃいますと…綾香さんは何をなさっていらしたのですか?」
好奇心を抑えきれずに縣は尋ねた。
遠慮勝ちに梨央が答える。
「…お姉様は…歌手をしていらっしゃるのです」
「歌手ですか!それは素晴らしい!…どちらの方でご活躍なのですか?藤原歌劇団?それとも…」
綾香は食前酒の次に注がれた白ワインを水のように飲み干しこともなげに答える。
「浅草オペラです。私、浅草の小さなカフェで歌っているのです」
「ほう…浅草の…」
慌てて梨央が言い添える。
「小さなカフェなんですけれど、お姉様のお歌は素晴らしいのです。お声が綺麗で、お歌に詩情があって、優しくて、包み込むような…でもとても艶やかで…聴いているだけで涙が出てきてしまうような素晴らしいお歌なのです」
情熱的に語る梨央の頬は薔薇色に紅潮し、瞳は煌めいている。
こんな梨央を縣は一度も見たことがなかった。
綾香が梨央の髪を撫で、顎をくすぐる。
「ありがとう、梨央」
梨央は艶やかな潤んだ瞳で綾香を見つめる。
縣は胸の奥がチリチリと焼けるような感情に襲われた。
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