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真珠浪漫物語
第12章 美しき薔薇の番人
今を遡ること12年前…
縣は父親の名代で梨央に会うべく、北白川家の門を潜った。
その頃既に、梨央の母親は他界し、父親の北白川伯爵は外交官の仕事でほぼ海外におり、一人娘の梨央のことを案じる余り、親友の縣男爵に娘の身辺が不安ないよう見守って欲しいと託したのだ。

その白羽の矢が立ったのが縣であった。
縣は二十歳。
東京帝国大学の二年生。
容姿端麗、学業優秀、文武両道に優れ、社交家の人気者…と自慢の息子であったからだ。
父、男爵は縣に命じた。
「梨央さんはお身体が弱く、今年6歳になられるが学校に通われずに家庭教師について勉強されているそうだ。お前、お話相手になって差し上げろ」
大学生の縣は不満であった。
「なぜ僕が子供のお守りを?相手は6歳ですよ?もっと相応しい年頃の子がいるでしょう」
男爵は葉巻を燻らせながら縣を見た。
日本人離れしたスマートな長身、映画俳優にでもなれそうな端正なマスク、おまけに頭脳明晰で趣味も幅広く、多くの友人にも慕われ、貴族の令嬢達の憧れの的のような礼也…。
父親から見ても生まれながらの貴公子のような水際だった姿である。
…とても二代前が炭鉱夫とは誰も思うまい。
親父の血も礼也でようやく薄まったな。
男爵は満足げに頷く。

「…北白川家といえば、恐れ多くも天皇陛下と従兄弟の血筋…その一人娘が梨央さんだ」
「知ってますよ」
「我が家は私の代でようやく爵位を賜わることができたいわば成金貴族だ。そう言ってまだ下に見る華族どもも多い。…北白川家と縁戚関係になれば誰もそのような陰口を叩くまい。我が家もようやく名門貴族の仲間入りになれるのだ」
縣は眉をひそめた。
「…お父様…まさか僕と梨央さんを結婚させようと目論んでおられるのですか?」
男爵は豪快に笑う。
「まだ先の話だがな。それにお前を後見人にしたいというのは北白川が言い出したことだ。去年の夜会でお前を見てすっかり気に入ってしまったらしい。梨央を任せられるのは礼也君しかいないと自ら頼んできたのさ」
「…お父様…僕は…」
呆れる縣の肩を抱きながら明るく言い含める。
「なあに、家庭教師兼遊び相手で時々ご機嫌窺いに行けばよいのさ。…お姫様のお相手なんて朝飯前だろう?」
豪快に笑う父親にため息を吐く。


…何で僕が子供のご機嫌取りに行かなきゃならないんだよ…。
縣は北白川家の玄関前に立ち、肩を竦めた。




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