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真珠浪漫物語
第12章 美しき薔薇の番人

乳母は慌てて、梨央を諭す。
「まあ、お嬢様!そのようなお行儀の悪いことを!」
縣は手で乳母を制し、寝台に近づきながら優しく声をかける。
「梨央さん、先程は何を訴えていらしたのですか?…もしかしたら私がお力になれるかも知れません」
ブランケットに潜り込んだ梨央が、ピクリと動いた。
メイドが遠慮勝ちに口を開く。
「…あの…実はお嬢様が、温室とお庭のお花が見たいと仰せられて…」
縣は明るく笑った。
「良いではありませんか、それくらい」
乳母が丁寧に、しかし一歩も譲らぬ確固とした口調で口を開く。
「…恐れながら、縣様。丹羽先生より今週中は決してお嬢様をお部屋から出してはいけないとお達しなのです。先日もお風邪の治りかけでぶり返し、肺炎になりかけたので、先生も大事を取るようにと…」
ブランケットの下で小さな、しかし頑とした声がする。
「…もう治ったもん!」
子供らしい可愛い声に縣は思わず吹き出す。
「お嬢様!何と言うお言葉遣いですか!」
嗜める乳母を遮り、縣は笑いながら声をかける。
「そんなにお元気なお声が出るなら大丈夫でしょう。…梨央さん、私がお花を見に連れて行って差し上げましょう」
ブランケットの下がまたピクリと動いた。
乳母が慌てて縣を止める。
「あ、縣様!…それはなりません。丹羽先生のお言いつけなのです」
「丹羽先生は少し神経質すぎやしませんか。子供は風邪をひいて丈夫になってゆくものです。あまり過保護にするとかえって良くない。部屋に閉じこもるより、外の新鮮な空気を吸ったほうがずっとお身体にも良いはずです。…さあ、梨央さん。出ていらっしゃい!」
縣は手を差し伸べる。
ブランケットがもぞもぞ動き、そろそろと梨央が顔を出す。
あの印象的な綺麗な切れ長の瞳が縣を捉える。
「…本当に…?梨央を連れていってくださるの?」
余りにあどけない言い方に縣の胸は梨央への愛しさで一杯になる。
「ええ、梨央さんが行きたいところならどこへでも」
乳母が懇願するように訴える。
「お、お庭はなりません。今日は冷えるのです…!どうか…!」
「では温室だけにしましょう。それならいいでしょう?…さあ、梨央さん」
縣の手を、梨央の小さな手が恐る恐る握りしめる。
「まあ、お嬢様!そのようなお行儀の悪いことを!」
縣は手で乳母を制し、寝台に近づきながら優しく声をかける。
「梨央さん、先程は何を訴えていらしたのですか?…もしかしたら私がお力になれるかも知れません」
ブランケットに潜り込んだ梨央が、ピクリと動いた。
メイドが遠慮勝ちに口を開く。
「…あの…実はお嬢様が、温室とお庭のお花が見たいと仰せられて…」
縣は明るく笑った。
「良いではありませんか、それくらい」
乳母が丁寧に、しかし一歩も譲らぬ確固とした口調で口を開く。
「…恐れながら、縣様。丹羽先生より今週中は決してお嬢様をお部屋から出してはいけないとお達しなのです。先日もお風邪の治りかけでぶり返し、肺炎になりかけたので、先生も大事を取るようにと…」
ブランケットの下で小さな、しかし頑とした声がする。
「…もう治ったもん!」
子供らしい可愛い声に縣は思わず吹き出す。
「お嬢様!何と言うお言葉遣いですか!」
嗜める乳母を遮り、縣は笑いながら声をかける。
「そんなにお元気なお声が出るなら大丈夫でしょう。…梨央さん、私がお花を見に連れて行って差し上げましょう」
ブランケットの下がまたピクリと動いた。
乳母が慌てて縣を止める。
「あ、縣様!…それはなりません。丹羽先生のお言いつけなのです」
「丹羽先生は少し神経質すぎやしませんか。子供は風邪をひいて丈夫になってゆくものです。あまり過保護にするとかえって良くない。部屋に閉じこもるより、外の新鮮な空気を吸ったほうがずっとお身体にも良いはずです。…さあ、梨央さん。出ていらっしゃい!」
縣は手を差し伸べる。
ブランケットがもぞもぞ動き、そろそろと梨央が顔を出す。
あの印象的な綺麗な切れ長の瞳が縣を捉える。
「…本当に…?梨央を連れていってくださるの?」
余りにあどけない言い方に縣の胸は梨央への愛しさで一杯になる。
「ええ、梨央さんが行きたいところならどこへでも」
乳母が懇願するように訴える。
「お、お庭はなりません。今日は冷えるのです…!どうか…!」
「では温室だけにしましょう。それならいいでしょう?…さあ、梨央さん」
縣の手を、梨央の小さな手が恐る恐る握りしめる。

