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真珠浪漫物語
第12章 美しき薔薇の番人

梨央の手を取った縣は優しく梨央を抱き上げた。
梨央は驚いたように目を丸くする。
梨央の身体は羽が生えた天使のように軽かった。
そして、林檎の花のような甘酸っぱい清らかな香りがした。
「あ、縣様…!お、お待ちください!」
いきなり梨央を抱き上げた縣に当惑する乳母に指示する。
「梨央さんにガウンを着せて差し上げて下さい。…梨央さん、このまま温室に行きますよ。梨央さんが道案内して下さいね」
梨央は縣の首に腕を回し、透き通るように白い頬を桜色に染めて頷いた。
最初は緊張していた梨央だが、温室が近づくにつれ、わくわくと嬉しそうに胸を高鳴らせているのが、抱いている身体から伝わってくる。
…温室の扉を開ける。
「わあ!やっぱり咲いていたわ!薔薇がもう咲いていた!」
梨央は興奮した声をあげた。
北白川家の温室は見事なものだった。
亜熱帯の植物…バナナの木や、椰子の木があるかと思えば、イングリッシュガーデンかと錯覚するような、英国の薔薇が色とりどりに咲いている。
中でも見事なのは白薔薇と赤薔薇であった。
薔薇の香気にむせ返りそうになりながら、縣は梨央の温かい体温と林檎の花のような香りになぜか少年のように胸ときめかせる自分を感じた。
「薔薇をご覧になりたかったのですか?」
優しく尋ねる。
梨央は生き生きと答える。
「はい!庭師の大野が、薔薇が見ごろですよと今朝教えてくれたのです。それを聞いたら見たくてたまらなくなって…この白薔薇と赤薔薇はお父様が植えられたの。だからどうしても見たくて…」
そして、縣をじっと見つめると咲き始めの林檎の花のように笑った。
「縣様、ありがとうございます。温室に連れてきてくださって…」
縣はそっと梨央の髪を撫でた。艶やかな穢れを知らぬ髪…。まだ誰の手にも触れられてはいない髪…。
異性でこの美しい髪に触れたのは僕が初めてだ…。
胸が高鳴る。
梨央の美しい瞳から目が離せない。
「…どういたしまして。…次回はお庭にお連れしますよ。いつでもおっしゃってください」
その日、帰宅した縣に父の男爵は待ちきれぬように聞いた。
「どうだった?梨央さんは」
縣は苦笑いしながら、しかし夢見るような眼差しで窓の外を見つめながら答えたのだ。
「…光源氏の気持ちが初めて分かりましたよ。…お父様、後見人のお話、謹んでお受けいたします」
梨央は驚いたように目を丸くする。
梨央の身体は羽が生えた天使のように軽かった。
そして、林檎の花のような甘酸っぱい清らかな香りがした。
「あ、縣様…!お、お待ちください!」
いきなり梨央を抱き上げた縣に当惑する乳母に指示する。
「梨央さんにガウンを着せて差し上げて下さい。…梨央さん、このまま温室に行きますよ。梨央さんが道案内して下さいね」
梨央は縣の首に腕を回し、透き通るように白い頬を桜色に染めて頷いた。
最初は緊張していた梨央だが、温室が近づくにつれ、わくわくと嬉しそうに胸を高鳴らせているのが、抱いている身体から伝わってくる。
…温室の扉を開ける。
「わあ!やっぱり咲いていたわ!薔薇がもう咲いていた!」
梨央は興奮した声をあげた。
北白川家の温室は見事なものだった。
亜熱帯の植物…バナナの木や、椰子の木があるかと思えば、イングリッシュガーデンかと錯覚するような、英国の薔薇が色とりどりに咲いている。
中でも見事なのは白薔薇と赤薔薇であった。
薔薇の香気にむせ返りそうになりながら、縣は梨央の温かい体温と林檎の花のような香りになぜか少年のように胸ときめかせる自分を感じた。
「薔薇をご覧になりたかったのですか?」
優しく尋ねる。
梨央は生き生きと答える。
「はい!庭師の大野が、薔薇が見ごろですよと今朝教えてくれたのです。それを聞いたら見たくてたまらなくなって…この白薔薇と赤薔薇はお父様が植えられたの。だからどうしても見たくて…」
そして、縣をじっと見つめると咲き始めの林檎の花のように笑った。
「縣様、ありがとうございます。温室に連れてきてくださって…」
縣はそっと梨央の髪を撫でた。艶やかな穢れを知らぬ髪…。まだ誰の手にも触れられてはいない髪…。
異性でこの美しい髪に触れたのは僕が初めてだ…。
胸が高鳴る。
梨央の美しい瞳から目が離せない。
「…どういたしまして。…次回はお庭にお連れしますよ。いつでもおっしゃってください」
その日、帰宅した縣に父の男爵は待ちきれぬように聞いた。
「どうだった?梨央さんは」
縣は苦笑いしながら、しかし夢見るような眼差しで窓の外を見つめながら答えたのだ。
「…光源氏の気持ちが初めて分かりましたよ。…お父様、後見人のお話、謹んでお受けいたします」

