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真珠浪漫物語
第12章 美しき薔薇の番人

12年前の想い出を語り終えると、縣は梨央を愛しそうに見つめ、
「…懐かしいです…あの頃は梨央さんは私の腕にすっぽり入るくらい小さくて、軽くて…本物の天使のようでした」
梨央は恥ずかしそうに俯く。
「…やっぱりロリコンじゃん…」
ぼそりと綾香が呟く。
「何かおっしゃいましたか?」
「いえ、何も」
綾香は澄まして答える。
縣は綾香にも聞かせるように、梨央に語り始めた。
「…それからは梨央さんにお会いするのが私の一番の楽しみになりました。梨央さんが体調を崩したと聞けば居てもたってもいられず、お元気になられたと聞けば神に感謝して…梨央さんは年々お美しくなられて、眩いほどでした。それは嬉かったのですが、梨央さんに言いよる男が出ては来ないか心配でたまらなくなり、伯爵に婚約のお願いをしたのです」
縣は不意に梨央の手を握りしめる。
梨央の手が小さく震えた。
綾香がちらりと縣を見る。
縣は綾香の眼差しを捉えつつ、梨央の手を強く握りしめる。
「…お姉様がいらっしゃるのでちょうど良い…。私の気持ちをお二人に聞いていただきたい」
梨央のたじろぐ瞳を見つめ、離さない縣。
「梨央さん、私と結婚して下さい。12年前のあの日から私は梨央さんをずっとずっと見守ってまいりました。美しい白薔薇が花開くのを辛抱強く待ち続け…我ながら大した忍耐力だと思いますよ」
「…縣様…私は…」
梨央の言葉を遮るように、縣は梨央の手を握りしめ、情熱的に口付ける。
「…私と結婚して下さい。…もう待てない…」
綾香をじっと見つめる。
「…美しくも大胆な薔薇盗人が側にいると知ったからには…」
梨央の手が冷たく強張る。
綾香は縣を見つめながら唇の端に妖しい微笑みを浮かべた。
縣は梨央の手を離さずに、月城に命じた。
「月城、突然で済まないが今日はこちらに泊めていただく。…嵐が来そうだからな…」
月城は一瞬の驚きをその端正な表情で隠し、何ら普段と変わらない口調で穏やかに答えた。
「かしこまりました。それではお部屋の準備と、縣様のお屋敷への連絡をいたします」
梨央の緊張に満ちた様子に胸を痛めながら、月城はダイニングルームを静かに退出した。
「…懐かしいです…あの頃は梨央さんは私の腕にすっぽり入るくらい小さくて、軽くて…本物の天使のようでした」
梨央は恥ずかしそうに俯く。
「…やっぱりロリコンじゃん…」
ぼそりと綾香が呟く。
「何かおっしゃいましたか?」
「いえ、何も」
綾香は澄まして答える。
縣は綾香にも聞かせるように、梨央に語り始めた。
「…それからは梨央さんにお会いするのが私の一番の楽しみになりました。梨央さんが体調を崩したと聞けば居てもたってもいられず、お元気になられたと聞けば神に感謝して…梨央さんは年々お美しくなられて、眩いほどでした。それは嬉かったのですが、梨央さんに言いよる男が出ては来ないか心配でたまらなくなり、伯爵に婚約のお願いをしたのです」
縣は不意に梨央の手を握りしめる。
梨央の手が小さく震えた。
綾香がちらりと縣を見る。
縣は綾香の眼差しを捉えつつ、梨央の手を強く握りしめる。
「…お姉様がいらっしゃるのでちょうど良い…。私の気持ちをお二人に聞いていただきたい」
梨央のたじろぐ瞳を見つめ、離さない縣。
「梨央さん、私と結婚して下さい。12年前のあの日から私は梨央さんをずっとずっと見守ってまいりました。美しい白薔薇が花開くのを辛抱強く待ち続け…我ながら大した忍耐力だと思いますよ」
「…縣様…私は…」
梨央の言葉を遮るように、縣は梨央の手を握りしめ、情熱的に口付ける。
「…私と結婚して下さい。…もう待てない…」
綾香をじっと見つめる。
「…美しくも大胆な薔薇盗人が側にいると知ったからには…」
梨央の手が冷たく強張る。
綾香は縣を見つめながら唇の端に妖しい微笑みを浮かべた。
縣は梨央の手を離さずに、月城に命じた。
「月城、突然で済まないが今日はこちらに泊めていただく。…嵐が来そうだからな…」
月城は一瞬の驚きをその端正な表情で隠し、何ら普段と変わらない口調で穏やかに答えた。
「かしこまりました。それではお部屋の準備と、縣様のお屋敷への連絡をいたします」
梨央の緊張に満ちた様子に胸を痛めながら、月城はダイニングルームを静かに退出した。

