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PM2時〜パッカー車の恋人〜
第28章 夫vs彼氏

「それで、何で紗蘭なんだ?君みたいに若くて格好良かったら、モテるだろ?紗蘭じゃなくてもいいんじゃないか?」
そう言った俺に彼は、優しく微笑んで、ゆっくり首を振った。
「サラさんじゃなきゃダメなんです。サラさんしかいないんです。やっと見つけたんです。自分のいるべき場所を。」
「どういう意味だ…?」
「価値観です!それがサラさんとはすべて合う。一緒にいてお互いが気を使わず、自然な自分でいられるんです。まるで空気のように、当たり前のように、そこにいられるんです。」
先程から彼が言っている価値観。
ただ好きだの嫌いだのと、それだけの感情ではないと言うことか。
確かに、他人なのだから、自分と同じような感覚、価値観を持つ人と出逢う事は、難しい。
彼はきっと、そういう事も含めて、紗蘭は自分と合っていると、確信しているようだった。
迷いのない彼の瞳をみて、俺は話を核心に触れた。
「で、君は紗蘭とこれからどうしたいと思っているんだ?」
俺がそう言うと、彼は椅子から立ち、俺の前にくると、膝をゆっくりと床につけて、綺麗な姿勢で土下座した。
そして…
「サラさんを、俺にください!!」
そうハッキリと言った。
彼がこう言ってくるのは、分かっていた。
別れるなんて、言うはずもない事を。
でも実際、言われてしまうと言葉が出てこない。
二人の間に、長い沈黙だけが続いた。

