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PM2時〜パッカー車の恋人〜
第28章 夫vs彼氏

さて、どうしたものか。
彼に会って彼の話を聞いて、彼の気持ちが本気であることがよく分かった。
そして、彼が痛みのわかる優しい男であることも、よくわかった。
「久遠さん、一週間時間をくれますか?それからまた、あなたに会って話をするので。さすがに、今日この場で返事は出来ない。頭の中がパンク寸前だからね。」
そう言って俺も珈琲を飲んだ。
「さすがに、冷めちゃいましたね。いれ直しますよ。」
マグカップを俺から受けとると、彼は椅子から立ち上がる。
その間に彼が言った。
「星野さんの返事待ってますね。星野さんからの返事があるまで、仕事以外でサラさんには会いません。」
「いいのかい?もしかしたら、君達を二度と会えないように、紗蘭を監禁するかもしれないぞ。」
彼がいれる珈琲の香りが、部屋に漂い、風に乗ってその香りが俺のもとへと運ばれてきた。
この部屋の中に殺伐とした雰囲気はない。
こんな話をしているのに。
話し合っている二人は、夫と浮気相手なのに。
不思議だが、和やかなムードが漂っていた。
珈琲をいれ終わった彼が、俺に微笑みながら言った。
「そんな風に思っているなら、俺はとうに殴られててもいいはずですよ。星野さんを信じます。あなたは、嘘なんてつかないはずだ。」
俺の心を見透かしたように、微笑む彼の顔は、やはりいい男で、何だか俺は少しだけ、嫉妬していた。
こんな形でなく、彼に出逢いたかった。
「待ってます。今日は、わざわざ会いに来てくれて、ありがとうございました。」
「こちらも、いきなり訪れたりして、すまなかったね。」
新しく出された珈琲を飲むと、ブラック珈琲なのに、何だか甘い気がした。
俺の渇いた心が、少しだけ潤っていった。

