この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
PM2時〜パッカー車の恋人〜
第29章 出された条件

「わざわざスーツじゃなくても、良かったのに。」
「すみません。私服がどれもラフすぎちゃって…。スーツが一番いいかなと思ったんですが、意外にチャラい感じになっちゃって…。」
すまなそうに謝るアズを見て、涼が微笑む。
「そういうとこが、君らしくていいんじゃないのかな?」
「ありがとうございます。」
私が知らない内に、会っていた二人。
その時はどんな感じで、どんな風に話をしていたんだろう?
そんな疑問が浮かぶほど、二人の間には和やかな雰囲気が流れていた。
もっと殺伐とした雰囲気になると思っていたから、私は二人の様子を見て、少し緊張の糸がほつれた。
和やかな雰囲気のまま、私達は昼食を食べた。
何も知らない人から見たら、夫婦の家に友達が遊びに来たようにしか思わないだろう。
まさか、夫と浮気相手が一緒に食事をしているなんて、普通だったら、考えられない光景が私の前に、当たり前のように広がっていた。
食事が終わり、片付けをしていると、アズが立ち上がり、食器を運んでくれて、私が洗った食器を拭いてくれる。
そして、私の耳元で静かに囁いた。
「サラ、逢いたかったよ。」
涼に気付かれないように、真顔で言われた甘いセリフに、胸がキュンとなって、私も静かにコクンと頷く。
いつも夫と過ごしている空間にアズがいる。
それだけで、いつもとは違う緊張をしていた私に、アズの甘いセリフが、私を癒してくれた。

