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PM2時〜パッカー車の恋人〜
第29章 出された条件

「わざわざスーツじゃなくても、良かったのに。」

「すみません。私服がどれもラフすぎちゃって…。スーツが一番いいかなと思ったんですが、意外にチャラい感じになっちゃって…。」


すまなそうに謝るアズを見て、涼が微笑む。


「そういうとこが、君らしくていいんじゃないのかな?」

「ありがとうございます。」


私が知らない内に、会っていた二人。

その時はどんな感じで、どんな風に話をしていたんだろう?

そんな疑問が浮かぶほど、二人の間には和やかな雰囲気が流れていた。

もっと殺伐とした雰囲気になると思っていたから、私は二人の様子を見て、少し緊張の糸がほつれた。

和やかな雰囲気のまま、私達は昼食を食べた。

何も知らない人から見たら、夫婦の家に友達が遊びに来たようにしか思わないだろう。

まさか、夫と浮気相手が一緒に食事をしているなんて、普通だったら、考えられない光景が私の前に、当たり前のように広がっていた。


食事が終わり、片付けをしていると、アズが立ち上がり、食器を運んでくれて、私が洗った食器を拭いてくれる。

そして、私の耳元で静かに囁いた。


「サラ、逢いたかったよ。」


涼に気付かれないように、真顔で言われた甘いセリフに、胸がキュンとなって、私も静かにコクンと頷く。

いつも夫と過ごしている空間にアズがいる。

それだけで、いつもとは違う緊張をしていた私に、アズの甘いセリフが、私を癒してくれた。


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