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PM2時〜パッカー車の恋人〜
第10章 初めての嘘

「サラ…。」
アズの声が聞こえて、振り返る。
その瞬間、アズの唇が私に近付いてきて、私の唇に触れた。
それは本当に一瞬の出来事だった。
顔を離したアズは、名残惜しそうに苦笑いして、ダンボールをパッカー車に入れ始めた。
さっきまで私達を遮っていた高さもなくなり、視界が広がっていく。
私はしばらく何が起こったのかわからず、その場で立ち尽くしてしまう。
「星野さん、仕事遅れちゃいますよ。」
アズがダンボールを片付けながら、私に声を掛けた。
「ボーッとしちゃいました。ごめんなさい…。」
アズにそう声を掛けて、バックヤードへと戻った。
自分の唇を指で触れる。
さっき感じたアズの唇の感触がまだ残っている。
久しぶりのアズとのキスに、私の気持ちは昂っていた。
自分でもよくわからないけど、体がまた外へと向かっていた。
無意識にドアを開けて「お兄さん!」と声を掛けていた。
丁度パッカー車に乗ろうとしていたアズが、驚いた表情で振り返った。
「いつもありがとう。」
「ありがとう。星野さんも、仕事頑張って。」
優しく微笑んでアズが運転席に乗り込む。
動いた車の運転席からアズが、手を振ってくれた。
アズの乗った車が見えなくなると、私はドアを閉めた。

