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3週間の情事
第2章 1日目
「結婚か……」
渉と穂の結婚記念日から、まるで何かの呪縛のように、この二文字が俺を締め付けてくる。
今だったら、呪文を掛けられた童話の主人公たちの気持ちがリアルに分かる気がするよ――。
はぁ~と、深く溜息を吐いていると
「あ……山之内さん?」
空森さんに、見つかってしまった。
俺が蔦に絡まっている間に、電話が終わっていたようだ。
偶然とはいえ、話を聞いてしまったことが申し訳なく思えてくる。
「おはようございます! 朝から空森さんがここに居るなんて珍しいね」
ここは素知らぬ振りをして、営業張りに満面の笑顔を浮かべてみた。
控えめだけど、頭はいい人だ――
これできっと何もなかったように空森さんも
『おはようございます』
そう言ってくると、思っていたのに――――
「山之内さん……さっきの電話の話……聞いてらっしゃいましたよね?」
彼女の察しの良さが、気まずい方へ進みだした。