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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第1章 幽霊屋敷にお姫様
こんな不運もあるものだ。
「着いたか……」
厳しい訓練の末にやっと銀バッジを手に入れて、忙しない日々から解放されたと言うのに
四度目の任務にして、こんな海外の僻地まで飛ばされるとはね──。
....
飛行機から車に乗り継ぎ、長旅のはてにようやく辿り着いたその土地。
車の後部座席から出てきた青年は、黒い革靴で舗装されていない道路に足を付けた。
道は少しぬかるんでいた。
来る道中もそうだったが……この地域は雨がよく降る。
そんなことは来る前から調査済みだが、まだ昼だと言うのにどんよりと積もった分厚い雲を見上げると、青年の気分はますます沈んだ。