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声を忘れた歌姫 ~ トラワレノ キミ ~
第1章 幽霊屋敷にお姫様
正装であるスーツに身を包む彼の周りには、同じ服装の大人たちが数人…これまた同じように車から降りてきた。
ひとりが小型端末で連絡をいれる。
その間、青年は依頼人の住み処である目の前の屋敷を、外部の形状を記憶しながら観察した。
首を痛めそうなほどの摩天楼( マテンロウ )が建ち並ぶ都心から、ずいぶんと車を走らせたのだ。
そしてここは対極的に閑散とした…、空き地の目立つ戸建て住宅街とでも言ったところ。
…そんな街の中で、前方の屋敷は明らかに浮いていた。
なるほど明らさまに……¨いわくつき¨
僕らの手を借りたい事態に陥っていても、不思議ではない。
「ようこそ、はるばる!」
「……」
「連絡をありがとう。さぁ入ってくれたまえ」
屋敷の扉が開き、芝生が広がる前庭の小路を通って男が現れた。
彼こそが依頼人──。
青年たちを家に呼び寄せた人物である。