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わけありっ、SS集!
第2章 ぎゃるかのっ!

ぎくりと、反射的に跳ねあがる俺の体。
その声は、つかその呼び方は。真っ先にあのヤマンバの姿が脳裏に蘇り、躊躇する頭を無理矢理回転させて、俺は後方を振り返った。
「……んあ!?」
だけど予想に反し、そこに立っていたのはあの子とは別人だった。
黒髪に薄化粧。パーカーに青いジーンズ。なんてことのない、普通の格好をした女の子だった。
「あれ……?」
人違い? というか、呼ばれた気がしたのも俺の勘違い?
その女の子と目が合ってしまい、慌てて会釈しゲームの方に向き直ろうとした時。
「りゅっちゃんてばあっ! ……シカト、や、やめておくんなましっ」
おくんなましってなんだ。あまりにも不自然な語尾に、再び振り返る。
ようやく悟った。
「もしかして、この前のヤマンバ……」
「ヤマンバって言うなぁっ」
このテンションと声。間違いない。面影がないけど、あの子だ。
元ヤマンバで今は普通の外見のその子は、はっとしたように口を塞ぐ。
何も言わず、じーっと俺の顔を見上げてきた。
ついしげしげと、俺もその子を見つめてしまった。ギャルメイクを取ると、意外にも結構可愛い。

