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わけありっ、SS集!
第1章 緋狐(ひぎつね)の宝玉

ふらふらと歩を進めるうちに、水流の音は大きくなる。やがて乱立する木々の向こうに、川が見えた。
幻聴ではなかった。どれほどぶりかの水が飲める。
少年はからからに渇いた喉をごくりと鳴らし、もつれる足で走った。川にたどり着き、冷たい水面(みなも)に指先で触れる。確かに感じる、液体の感触。
少年は川の中に頭ごと突っ込み、文字通り浴びるように飲んだ。
渇いた身体が潤い、生気がみなぎってくるようだった。
空腹も、少しだがまぎれた。
そのまま土ぼこりで汚れた顔も洗い、視線をあげた時だった。
「あ……」
少年の視界に映った、一匹のもふもふしたもの。それは、じーっとこちらを見つめてくる小狐(こぎつね)だった。
少年は目を見開いた。
あれはーー。
「幻の……緋狐(ひぎつね)?」
川の淵に手をつき、身を乗り出すようにして少年は呟いた。

