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明治鬼恋慕
第7章 血の華

こんなことで泣くなんて馬鹿みたいだ。
みっともない。恥ずかしい。
こんな情けないとこ見せちまったら、リュウに怪しまれてしまう。
「なんでも、ない。驚いただけだ」
「…驚いたって…?」
焔来は涙を荒々しく拭ってから、リュウに問われる前にと自分から口を開いた。
「俺、人間が死ぬとこ…っ…初めて見たから。落方村で呑気に暮らしてきたから…さ」
「…そうだったんだ」
「お前と毎日手合わせしてきたけど、実戦は初めてなんだ」
喋りながら焔来はリュウのもとに引き返す。
地面に手を伸ばして、落ちた首飾りを拾った。
「お前は…慣れてたよな」
「…っ…僕は」
「べつに話さなくていいっ、お前の過去を掘り返す気はねぇから」
茎がちぎれてしまった曼珠沙華は、もう焔来の首にかけられない。
それを手に持ったまま視線を下ろすと、リュウの着物の袖についた赤いシミが目に映った。

