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明治鬼恋慕
第7章 血の華

出会う前の過去の話を、リュウがするのはこれが初めてだった。
落方村にいる間、焔来が詮索してこなかったから、わざわざ彼も明かさなかったのだ。
「僕はもともと京の都で暮らしてたんだ。守護役の下で、攘夷派の人間を取り締まる組織に身を置いて、…殺してきた」
「じょうい派……?」
「反幕府勢力のことだよ。…人間たちの世の中がどう変わろうと正直、僕はどうだってよかったけどね。でも生きていくには便利な立場だった」
「……」
「命令どおりに標的を殺して、必要なら…隠れて、食事も、してきた。僕なりに人間社会に順応できていたし…」
「そうなの、か」
いつものようにリュウの話は小難しい。
幕府とか攘夷とか。
ああ、でもその話が本当なら、リュウがこの国の情勢に詳しいことも納得できる。
人間を嫌っているリュウだけど…
「俺と会う前は都にいたのか…」
「うん」
人間社会のことを、焔来よりもよっぽど詳しく理解できているのだ。

