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明治鬼恋慕
第8章 城下町
「そりゃあ食べてみたいけど、俺たち、金が…」
「お金ならあるよ」
「そうなのか?」
リュウは懐から巾着を取り出した。
そういえば巾着の中身を知らない焔来。そんな焔来に、リュウが絞った口をゆるめて見せてやる。
そこに入っていたのは火打ち石と、幾らかの銭だった。
「村ではお金を使わなかったから…。これは僕の手持ち分だよ」
都で隊士として生きていた頃に貯めた金だろう。
リュウは詳しくは話さなかったし
焔来も追及はしない。
「そんなに多くないから、冬用の着物を買うお金は残しておくように気をつけないとね」
「んじゃあ先にそっちを買いに行こう。足りなくなったら困るからな」
「…あれ、焔来にしては冷静な判断」
「…っ…リュウ…お前、俺を食欲の塊かナンカだと勘違いしてねぇか…?」
「まさかそんな…──うん、その通りだけど」
「っておい! そこは否定しろよ!」
バシッと強く焔来がリュウの背中を叩く。
痛くも痒くもないリュウは笑いながら先を走った。