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明治鬼恋慕
第8章 城下町
長屋の土間をひとつ上がった大部屋で、二人は他の客と一緒に着物を選んでいる。
そこでちょうどよい大きさの物を探している彼等を、周りの客はチラチラと盗み見ていた。
無論、焔来とリュウはその視線に気付いている。
「…なぁリュウ、さっきから…」
「わかってるよ。警戒してて」
素知らぬふりを続けながら、小声でかわす。
“ 鬼だってばれたのか? ”
ばれるような落ち度はないと信じたいが、油断は禁物だろう。
「俺…これにするかな。大きさもちょうどよくて仕立て直す必要ないし。──…リュウも試せよ」
「うん、僕はこれかな」
急ぎぎみに決めた焔来が、着物の入った籠( カゴ)をリュウのほうに押した。
その中から手早く目星をつけたリュウは、試すために自身の着物を脱ぐ。
左袖を肩からぬき、上半身をさらす──
その時、周りの客がどよめいたのがわかった。