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明治鬼恋慕
第2章 落方村

“ こっちの方から聞こえるんだよな~ ”
普通なら聞こえる筈もない仔犬の鳴き声だが、耳をすませた焔来にはその方向がわかってしまう。
村の東を流れる小川に出ると、案の定、川沿いに走る犬の汚れた尻を見付けた。
「あんなとこまで…っ」
仔犬はキャンキャン鳴きながら、後ろの焔来に見向きもせず進んでいく。
そして──川にかかる小さな橋の上で止まったのだった。
「…ッ…何だ?…人か?」
不自然なくらい騒がしい仔犬。
見付けてくれと言わんばかりに飛び跳ねるそいつの足元には、ピクリとも動かない人間がうつ伏せの状態で倒れていた。

